漫画を描いている人ならば必ずぶち当たるのが「ネーム」をつくる作業。ネームが中々できない、できても通らない苦しさは、やったことのない人にはわかりません!
ネームとは漫画を作る作業の中で最も楽しく、そしてつらく苦しい作業かもしれません。これを越えられなければ漫画家にはなれませんし、プロ志向でなくても満足のいく漫画を作ることすらできません。ということで今回は、避けては通れないネームをいかに完成させるかのコツをご紹介。また、漫画を描いている人たちがネームにどれだけ時間をかけているかについてのアンケート結果を発表します。
この記事の目次
ネームって何?
漫画を描いていてネームを知らない人はあまりいないと思いますが、念のため簡単に解説しておきましょう。漫画のネームはよく「漫画の設計図」と説明されます。
非常に(超)ラフに書いた漫画をイメージしていただければと思います。このラフ漫画で何をしているかと言うと、主にコマの割り方、セリフの展開、キャラの配置や動きを決めているのです。同じシーンでも、納得いくまで何度も書き直すので、絵の部分はラフでもよい(むしろラフの方が早いし、書き直しやすい。)のです。
下書きと何が違うの?と思うかもしれません。下書きはペン入れの前の状態で、度のコマに何を書くのかは決まった状態のもの。ネームはまだ何も決まっていない状態のものです。
実物を見たほうが早いかもしれません。※落書きではありませんよ。
※編集者など人に見せるネームの時はこのくらいにします。
くわしくは↓こちらに書いておりますので見てみてください。
ネームは何度も書き直す
ネームは何度も書き直すものです。これを「ネームを練りこむ」と言ったりします。なぜ何度も書き直すのかイメージしづらいかと思いますが、コマの割り方一つとっても無限の割方があり、どれが最適かは描いて読んでみないとわからないのです。1回のキャラのやり取りを1コマに入れることもできますし、2コマに分ける(割る)こともできます。3コマにもできますし、セリフの分け方も色々です。実例を見てみてください。それぞれ印象がちょっとずつ違うのがわかると思います。
・「犯人は」と「この中に」をコマを分けてタメを作り、「いない」と「ええー?!」は同じコマにしてテンポよくしています。
・「犯人はこの中にいない」を1コマにまとめ、主人公以外のキャラの無言のコマでタメを作り、最後のコマで反応を見せています。主人公の顔が隠れているのがポイントです。
このように、無限の選択肢の中から1つを選択しなければならないのです。正解はありません。何を選択するかが作家性になるわけです。1つを選ぶという作業は、他を捨てるという作業です。これが苦しいのです。このコマ割りの方が主人公のキャラが表現できるけど、この方がテンポが良い、1コマでまとめることもできるけど、3コマ使った方が重みが出る・・・などと苦しむことになります。ページの制限もありますから、この内容を1ページに入れたいけど、コマが小さくなりすぎてしまう、かといって2ページでは多すぎる・・・そんな葛藤の中で最適なものを選んでいくことになります。
ネームについてもっと詳しく知りたい方はこちらで解説していますのでご参考に。
ネームに必要な時間
このようなネームを切る作業、どのくらい時間がかかるのでしょうか。
ドツボにはまってしまったときは何か月かかってもできないこともありますし、逆にすべてが気持ちよくつながって1日でできたりすることもあります。(大抵の場合ごちゃごちゃこねくり回すより、イッキに描けたときの方が面白くなります)
今回、ネット上で漫画を描いている人たちに「ネームにかかる時間」についてアンケートをとってみました。回答してくれた方がどの程度の漫画描きなのかまではわかりませんが、あまりこういったデータはないので、目安にはなります。結果はこちら。
※30ページくらいの読み切りを想定。だいたいの目安時間。2018.3.1 Twitterにて n=32
1週間から1か月が最も多く63%となりました。次いで1週間が25%。合わせると1か月以内が88%という結果に。私としては結構早いなというイメージです。1週間未満・・・かなり早い。ちなみに私の感覚だと、ゼロからでしたら1か月~3か月が普通かなと思っておりました。はまってしまうと半年かかることもありますし、できるときは1日でも、1週間でもできることもありますが。
まずは最後まで作る。早く完成させるコツ
ネームに時間がかかってしまうとなかなかペン入れに入ることができず、作品を仕上げることができません。漫画を描いている感じもしないですし、焦ってしまいますよね。
ネームを作っていて途中で止まってしまうケースは、途中で整合性が取れなくなってきた、面白いと感じられなくなってきたなど、いろいろあります。
最初に頭の中でストーリーを組み立てて、8割がたできたように感じたのでネームにとりかかるが、終盤になって整合性が取れていないことに気付く・・・あのときのあのアイテム壊しちゃったけど必要だったじゃん! でも壊れない展開にするにはヒロインが死なないといけないし、それ3ページ目くらいの話だしどうしよう・・・ということになってしまうのです。
こうなったら、何時間・何日そのネームに費やしていようと、最初からやり直しです。
これを避けるためにはどうしたらよいのでしょうか。
いくつか方法をご紹介しましょう。
プロットを書く
そんな場合は、ネームに入る前にプロットを書くがおすすめ。プロットって何ぞやという方はこちらを見てみてください。
簡単に説明しておきますと、プロットとは「あらすじ」のようなストーリーを短く文章にまとめたものです。文章はネームよりも早く書けますし、修正も簡単です。スマホで作業することもできますので、いつでも取り組むことができます。文章が整っている必要はなく、自分だけがわかればいいので、文章が苦手でも大丈夫。プロットによって全体の流れを確認してからネームに入れば、失敗の確率がぐんと下がります。
小さいネームを書く
小さいサイズのネームを書くのもおすすめです。
本番のネームはA4のコピー用紙などに書いている人が多いのではないかと思いますが、A4は大きくて書き込まないといけない強迫観念にとりつかれてしまいます。ネームの目的は、上記の通り書き込むことではないので、これでは目的が達成されません。
そんな場合は、用紙を4つ折り(2つ折りでも可)にして、細かい部分は置いておいてざっくりと書いてみましょう。「ネームのネーム」ですね。プロットと同じく、修正が簡単で、全体を見通すことができます。
自分用ネームを書く
絵を描きこみすぎて時間がかかってしまう人も多いかと思います。絵を描きこまないと気分が乗らないという人も多いと思いますが、ネームの目的はそこではありません。人に見せない自分だけのネームと割り切って、自分だけがわかるラフなネームを意識して書いてみましょう。ただ、全く書き込まないのもストレスですので、自分へのご褒美として決めコマだけは描いていいことにして、他のコマは我慢するのがおすすめ。
こうして時間を短縮し、なるべくネームを練りこむことに時間を費やすようにしましょう。
ネームの目的を忘れない
ネームはコマ割り、セリフ回し、キャラの配置・動きを決めるのが最優先です。他の要素はなるべくシンプルにすべきです。担当編集などに見せるときは、ネームが完成してから「ネームの清書」をすればいいので、まずはネームを練って完成させましょう。それが作品完成の一番の近道になるのです。
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漫画はざっくりというと、ネーム→下書き→ペン入れ(清書)という作業を経て完成します。このなかで漫画の面白さを最も左右するのがネームです。
もしかしたらネームという用語を知らない人もいるかもしれませんので、一応解説しておきますと、ネームはラフな絵で漫画のコマ割りやセリフ、キャラの配置を描いたものです。最も大きな役割はコマ割りを決めること。1つのコマにどんな情報を入れ、何を入れないのかを決めるのです。漫画の設計図とも呼ばれますね・・・続きを読む