プロットって何?役割から考える意味と書き方
ストーリーを作る方法を学んでいると、『プロット』という言葉に出会うときがあります。
このプロット、簡単に言えばストーリーの設計図のことで、ストーリーを短くしたものです。
でもいざ作るとなると、どこをどう短くしたらいいのかわからなかったりします。同じようによく聞く『あらすじ』との違いもよくわかりません。
今回はこのプロットについて、役割を考えながらその意味と書き方を詳しく解説していきましょう。
この記事の目次
『あらすじ』と『プロット』違いは?オチは必要?
『プロット』は簡単に言うと、ストーリーを短くしたダイジェスト版です。それってあらすじと違うの?そう思ったかもしれません。むしろ『あらすじ』の方が耳にする機会が多いのではないでしょうか。結論から言いますと、この2つは違うものです。誰のために作られているかという点で異なるのです。
読者のために作られたのがあらすじで、作者のために作られたのがプロットです。
あらすじは読者のため
あらすじは読者のためにあります。物語のダイジェスト版を読んでもらい、本編に興味を持ってもらったり、単にストーリー全体を紹介したりする場合に作られます。あらすじをどのような対象に、どのような効果を期待して作るかによって、結末(オチ)があるタイプとないタイプがあります。たとえば「これから本編を読んでもらいたい」というような目的のあらすじにはオチは書きません。書いたとしても抽象的に書かれます。一方、これから本編を読まないだろう人に単に物語を紹介する場合はオチを書くことがあります。(あらすじの例を含めたもっと詳しい解説はこちらで紹介しています。)オチがあるかないかの違いはありますが、あらすじは、読者のためにあるというのがポイントです。
プロットは作者のため
一方、プロットは作者のためにあります。作者がストーリーを作るための途中段階として作るものです。作者自身がストーリー全体を把握してから本編を作るようなときと、作者に関わる他の制作者がストーリーをチェックするという役目もあります。ということで、あらすじはオチがある場合とない場合もあるのに対し、プロットには基本的にオチがあります。ストーリーをダイジェストの状態で確認するのが役割だからです。物語の結果でストーリーの善し悪しが変わったりするものですから、オチがひつようなのです。(オチがないプロットから本編を制作することもあります。長い連載などはオチが未定のまま始まったりします。)
であ、プロットについて詳しく見ていきましょう。
『プロット』の役割と二つの良いところ
ストーリーをつくる方法はいくつかありますが、その中の一つに冒頭から順に細部まで書いていく方法があります。細部まで書きながら進めると完結までに長い時間がかかります。長く作品に関わっていると、途中でアイデアを追加したくなったり、伏線をはり忘れていたり、前後で整合性が取れなくなったり、設定を変更したくなったりと、色々な予期せぬ”トラブル”が起こります。たとえば途中でトリックを破る他の方法があることに気付いてしまい、変更が必要になったり、死んだはずのキャラが後で必要になったりするのです。
そうすると時間をかけて途中まで作ったのに、最初からやり直しになったり、そこまで行かずとも手直しに大変苦労したり、というようなことが起こります。慣れていれば、このように最初からディティールアップして書いて着地できる場合もありますが、大変な難易度です。
それを避けるため、ストーリーを簡単に頭からお尻までざっくりと作ってしまい、あとからディティールアップして完成させる方法があります。このとき作る最初のざっくりしたストーリーのことを『プロット』と呼びます。プロットは作る側の人がストーリーを理解できればよく、長さや書き方に基本的には決まりはありません。どこまでを省略してどこまでを書くかは作者の感覚によります。例を見てみましょう。
【長靴をはいた猫】
粉ひきの親父、3人の息子がいる。親父は死ぬ。3人の息子には別々の遺産が与えられる。上の二人には良いもの、三男にはネコ一匹。途方に暮れる三男にネコが話しかける。「私に長靴をください。私が役に立つということを証明しましょう。」三男は・・・
上の二人の息子には本当は粉ひき小屋、ロバが与えられますが、ストーリーの大筋とは関係がないので省いています。逆にそこが重要であると思えば、入れてももちろんいいのです。この粗さの程度を理解するために、もう一つ違うバージョンを見てみましょう。違う作者ならこう書くかもしれません。
【長靴をはいた猫】
親父が死んで3人の息子には別々の遺産が与えられる。三男にはネコ一匹。三男にネコは急に二本足で立ち上がり人語を話しだす。驚く三男に長靴をくれと。三男は・・・
プロットには二つの良いところがあります。一つは、先ほどもふれましたが、全体の見通しをつけることができる点です。伏線はどこに入れるか、どんなアイデアを入れるか、整合性は保てるか、面白いか、そういったことをチェックしてから、細かい部分を作ることができます。変更も簡単です。一度に完璧なストーリーが作れるスキルがあればプロットは必要ありませんが、修正を繰り返して作り上げる場合には時間も手間も短縮することができます。
もう一つは、ストーリーを共有するために優れている点です。ストーリー作りには、作者側が一人でない場合があります。共同でストーリーを作る相方がいる場合や、プロデューサーや編集者のような、チェックする立場の人がいる場合です。そのようなときは、相手にストーリーの内容を理解してもらう必要がある場合があります。相手からアドバイスを受けたり、修正点が指摘されたり、OKかどうかの判断されたりします。この場合、相手は最初からディティールまで完成した長いストーリーすべてに目を通すよりも、まずはダイジェストで見たほうが時間の短縮になります。さらにそのあとに変更や修正が加えられる場合にも、ダイジェストの方が簡単に直すことができますね。
プロットは、このような役割を持っています。
プロットの書き方
以上でプロットの意味と役割が理解できたかと思います。ここからは、どのように書くのかについて説明します。
プロットの基本は「ディティールを省いて原因と結果のみを書いていく」ことです。
たとえば、このようなシーンがぼんやりと頭の中にあったとします。
「女の子が頑張ったおかげで花壇の花が満開になった。」
これがプロットの状態です。もっと詳細にイメージがあれば加えればいいのですが、これだけでも充分です。
作品にするには、これをディティールアップします。女の子はどんな子だろう、頑張るということはどのような行動だろう、花が咲くのはいつだろう、そういったことを考え、付け加えていきます。
「花子は教室ではおとなしく目立たないタイプ。彼女は雨の日も風の日も、夏休みも冬休みも、毎日学校に通って花の世話をした。春になると学校の花壇は満開の花で彩られ、見る人の心を和ませた。」
他にも見てみましょう。桃太郎ならば、このようになります。
「桃から生まれた桃太郎が、犬、猿、キジを仲間にして、鬼を退治した。」
ここに、おじいさん、おばあさんの話や、キビ団子の話、桃が流れてくる描写、鬼ヶ島に向かう船、鬼ヶ島の描写など、ディティールを加えてゆくことでストーリーが完成します。
作者の頭の中に、ある程度のディティールもあるストーリー全体のイメージが出来上がっている場合は、プロットの作成は比較的簡単な作業です。頭の中にあるストーリーの思いついている部分だけを簡素に書き連ねていけばよいのです。
思いついているのはワンシーンや、ワンアイデアくらいで、全体のストーリーはぼんやりとしか思いついていない場合は、そこから逆算して全体を考えます。このシーンをドラマチックにするには、どのような設定が必要だろう、この特殊な能力はどのようなシーンで活躍するだろう、そういった発想の仕方をします。
お気づきかと思いますが、プロットづくりとは、まさにストーリー作りそのものなのです。ということで、いかにしてストーリーを作るかということを簡単に説明していきます。
5W1H、起承転結では作れない
よく、ストーリーを作る、というと5W1Hで作るとか、起承転結で作るという言い方をします。知らない人のために、一応解説しますと5W1Hとは下記のようなものです。
1、When いつ
2、Where どこで
3、Who だれが
4、What なにを
5、Why なぜ
1、How どのように
Wが頭文字のものが5つと、Hが1つで5W1Hというわけです。結論から言いますと、これだけではストーリーは作れません。
おなじみの桃太郎で当てはめてみましょう。
1、むかしむかし
2、あるところで(日本でしょう)
3、桃太郎が
4、鬼退治をした
5、鬼が都を荒らしまわったから(これはバージョンによっては語られていないこともありますが、とりあえずWhyの例としてこうしておきます。)
1、犬、猿、キジをお供にして
ある程度まとまっているように見えますね。しかし、これが長い話になると途端に役に立たなくなります。誰でも知っている例として、西遊記をあげてみましょう。
1、むかしむかし
2、あるところで(中国でしょう)
3、孫悟空とその仲間と、三蔵法師が
4、天竺まで旅をした
5、経典を取りに行くため
1、様々な困難を乗り越えて
いかがでしょうか。プロットの役割をもう一度思い出してみてください。プロットにはストーリー全体をチェックする役割がありました。面白いかどうかもここで確認されます。これでストーリーの面白さがわかるでしょうか?読者が知りたいのは「様々な困難を乗り越えて」の部分であり、そこが最も面白い部分なはずです。5W1Hではストーリーは作れないのです。
では、5W1Hが何の役にも立たないのかと言いますと、そうではありません。5W1Hはストーリーではなく、場面を説明するためには有効です。ある一シーンを描写するときは、いつどこで誰が何のために何をしたかが書かれる必要があります。(ミステリアスにするためにあえて明確にしない場合もあります。)
起承転結もあまり向いていない
では有名な起承転結はどうでしょう。こちらも結論から言うと、起承転結だけでストーリーは作れません。詳しくはこちらで見ていただきたいのですが、簡単に説明しますと、『起』は設定を説明する部分です。『承』で物語が始まり、『転』で展開します。『結』では結論を書きます。桃太郎で見てみましょう。
起 桃から生まれた桃太郎がいた
承 大きく育った
転 鬼を退治しに出発
結 鬼を退治した
非常に簡素にまとまりましたが、あまりに簡素過ぎますね。さあこれをもとにディティールアップしろ、と言われてもなかなか難しいのです。
考え方の変化と事件の解決
ではどうやって考えるのかと言いますと、2つの事柄を中心に考えるとうまく作ることができます。1つは心理の動きでもう一つは現実の動きです。
(1)主人公か、主人公以外の最低1人の考え方の変化を作る
まずは、心理の動きです。ストーリーの冒頭では誰かがこう思っているという価値観が、ストーリーを通じて違う考え方に変化することです。
誰が変化するかによって「成長物語」「英雄物語」の2つパターンがあり、物語にはこのどちらかしかありません。(複合はあります。)
一番簡単な例で、臆病な主人公がストーリーを通じて勇気を出す、というような話をイメージしてください。この主人公の考え方が変わるのが「成長物語」です。
一方、完成された主人公が、誰かを励ましたり、諭したり、あるいは戦ったりして、他の登場人物の考えを変化させる、このよう、な主人公がほかの誰かの心を変化させるのが「英雄物語」です。
まずはこのどちらかを選択し、誰の考え方を変化させるのか、考え方の変化の仕方はどうなのかを考えます。また、考えは何もしなければ変わりませんので、どのようなきっかけて変わるのかを考えます。
「成長物語」
主人公の当初の考え:渡る世間は鬼ばかりだ。
ストーリー終了後の主人公の考え:世の中悪い奴ばかりじゃない。
こう考えると自ずとこの間、いい奴にであった、ということが想像されると思います。きっかけとしては、何か困ったことがあったときに助けてもらったりした、などと考えを発展させることができます。
「英雄物語」
主人公の変わらない考え:困っている人は助けて当たり前。
サブ主人公の当初の考え:渡る世間は鬼ばかりだ。
ストーリー終了後のサブ主人公の考え:世の中悪い奴ばかりじゃない。
英雄物語は主人公の考え方が変わらないのが特徴です。変わるのはサブ主人公です。この場合はサブ主人公に困ったことがあり、主人公が助ける、という構図が浮かぶと思います。物語はどこから考えてもいいのですが、この部分を考えると非常にすっきりとストーリーらしくまとまります。
(2)事件の解決
もう一つは現実の動きです。何も起きないストーリーはありません。(あるとしてもかなり特殊なものです。)何かがあって、それが解決されるのがストーリーです。ここではイメージしやすいように「事件の解決」と書きますが、事件とは犯罪のことだけではありません。ストーリー上の解決すべき問題のことを指します。例えば、競合する者がやってきて勝たなければならないとか、舞台の病院の権力争いが発生しただとか、テストに合格しないと命がない、そういうことです。
このような問題を解決するのは、必ず主人公です。主人公は問題を解決するから主人公なのです。
事件を考えたら、主人公がどのように問題を解決するかを考えましょう。そして、問題解決の前後に(1)の考え方を変化させます。
大きく分類すると、考え方が変化したために問題が解決されるのか、問題が解決されたために考え方が変化するのかの2通りがあります。
まとめますと、このようになります。
「成長物語」
事件:新しく主人公が入った会社は権力闘争が激しく人間関係がギクシャクしていた。
主人公の当初の考え:渡る世間は鬼ばかりだ。
きっかけ:全員敵だと思ったが、いい奴もいた
事件の解決:主人公がいい奴に励まされて、事件を解決。(どうやって解決するかが面白さになります。)
ストーリー終了後の主人公の考え:世の中悪い奴ばかりじゃない。
考え方の変化、事件の解決、以上の2つを考え、細かい部分は省いて、原因と結果だけを記述すれば、プロットが出来上がります。
物語づくりについて詳しくはこちらで紹介していますから、見てみてください。
プロットの長さ
プロットの役割をおさらいしてみましょう。役割は以下の2つです。
1、ストーリーの修正の労力をなるべく減らすため
2、誰かに製作途中のストーリーを理解させるため
ですので、長さに制限はありません。以上の役割を満たしていれば、400字だろうと、10000字だろうとかまわないのです。本編の長さにも関係するでしょう。短い話ならば200字でまとまるかもしれません。とにかく、調整しやすく、見どころがわかり、短時間で確認しやすい形になっていればOKなのです。これらの役割を念頭に、作っていきましょう。
まとめ
プロットはストーリー作りのツールとして便利なものです。いきなり詳細から書き始めるよりも、ぜひ活用して、面白ストーリーを作るために、ストーリーを練っていきましょう。