漫画を読んで感動したり、勇気をもらったりすると、漫画家になりたい、漫画を描きたい、と思いますよね!その情熱、とても重要です。その情熱があれば、漫画は誰にでも描けます。ということで、今回は基本的な漫画の描き方を紹介したいと思います。紹介するのは大昔から変わらないアナログのやり方になりますが、デジタルの方にも役に立つと思います。なぜなら、ツールが変わるだけでやってることは同じだからです。プロも、初心者も方法は同じです。漫画の描き方を学んで、面白い漫画を描きましょう!
この記事の目次
漫画の描き方には2つある
漫画家はストーリーもできなきゃだし、絵も描けなきゃいけません。原作と作画が別れていることもありますが、両方こなすのが基本です。この2つについて、詳しく説明していきましょう!
1、漫画の絵の描き方
まずは、漫画の絵の描き方について説明していきましょう。ここで紹介するのは、絵の描き方と言っても、体の描き方とか、顔の描き方、背景の描き方とかそういった、イラストの技術ではなく、コマを割って、枠を作って、キャラクターやセリフを入れる原稿を作る方法です。絵自体は、基本的には描けば描くほどうまくなるので、とにかく描けばいいだけです。スラムダンク、進撃の巨人、ワンピース、キン肉マン、漫画の1巻の絵と、あとの方の巻で絵が全然違うのを見たことがありますよね。漫画家はそれこそ毎日何時間も絵を描いています。たくさん描けば上手になる証拠です。
それより、知らなくてはならないのは、どのような工程で漫画の原稿ができていくのかということです!
まず簡単にまとめると、漫画を作る工程は
0、ストーリーを考える
1、ネームを描く
2、下書きをする
3、ペン入れをする(清書する)
4、仕上げをする
という5工程に分かれています。デジタルの人は、この全てか、どこかの部分をパソコンで作業をします。
この中でストーリーの作り方については、ボリュームが大きいので、一番最後で説明します。ということで、まずは「ネーム」から見ていきましょう。
1、まずネーム
まず、頭の中にストーリーが出来上がったと仮定してスタートしましょう。面白い話ができました!さっそく原稿に描いていこう!という勢いになっていますが、漫画はいきなり原稿用紙に書いてはいけません。まずは『ネーム』を描きます。ネームとは簡単に描いた漫画です。漫画の設計図のようなもので、コマ割り、セリフ、キャラの大体の配置が書かれます。最初にネームを作ることによって、全体のバランスを整えたり、整合性をチェックしたり、伏線を確認したりします。
↓これがネームです。落書きではありません。絵は粗いですが、コマを割がどのように割ってあり、どのようなセリフがどのように入っていて、キャラがどう配置されているかがわかります。コマの割方のルールについてはこちらに詳しく書いたので後でどうぞ。>漫画のコマ割りが100%わかる教科書
絵の粗さがどの程度かは人によって異なります。私の場合は絵は非常に適当です。私くらいの粗さの人は多いのではと思いますが、これ本番の絵じゃん、というくらいのレベルの人も見たことがあります。少しくらい書き込まないと自分もイメージがつかない場合もあると思いますが、そのような時は書き込んでもいいと思います。ただ、何度も書き直すことになると思いますので、必要最低限で大丈夫です。人にもよりますが、36ページ描くのに、10倍くらいは書いて捨てます。ネームの目的はコマ割り、セリフの配置の完成ですから、それが達せられれば絵は適当でいいのです。ただ、ネームを編集者など、人に見せる場合は、最低限キャラが見分けられることと、セリフが読めることが必要ですから、もし自分のネームが自分しかわからないものだったら、人に見せる用のネームはきれいに書き直せばいいのです。あと、見てもらうときはページをふるのも大切です。
ネームの前にプロットやメモを作る人もいます。文章で書く人もいるでしょう。ネームのネームを作ってもいいでしょう。この辺は自分で試行錯誤して方法を考えてみてください。ネームの描き方について、詳しくはこちらも参考にしてみてくださいね。
それから、いよいよ原稿用紙に書いていきますが、その前に原稿をはじめとした道具をみてみましょう。
●道具はこれだ!!
漫画に使う道具は基本は紙とペンです。あと定規。この3つがあれば何でも書けます。この道具の少なさが漫画の魅力の一つだと私は思います。これだけの道具でどんな壮大なストーリーも表現できるからです!原稿は宇宙だ!デジタルの人はPC1台で・・・ってことになります。どちらにしてもあなたの頭脳と腕で作品は出来上がるのです。
漫画の絵は、原稿用紙にペンとインクで書きます。ペンにはGペン、丸ペン、スクールペンなどといったものがあります。丸ペンは細い繊細な線が引けます。スクールペンは強弱のない線、Gペンはいろいろな線がかけて最も表現力が高いと言われています。鳥山明先生、尾田栄一郎先生、浦沢直樹先生など大御所の漫画家はGペンが多いです。デジタルの表現力は無限ですが、何でもできるかわりに計算されすぎた線になるという弱点はあり、偶然を味方につけられる分やはりまだまだアナログが強いような気がします。
↓これがGペンの線です。いろいろな太さの線が書けます。今頃気付いたのですが、つけペンの場合、紙にペン先をつけて長時間置いておいても紙に染みません!マジックなら染みてしまいますね。線に迷ってペン先を紙につけてしまっても大丈夫です。
Gペンも、他のペンもペン(持つ部分)とペン先(金属の部分)がわかれており、合体させて使います。ペン先は消耗品で、使っていくと段々シャープさがなくなります。思い通りの線が引けなくなったら、ペン先だけを交換します。
最近はデジタル環境ももちろん多いです。↓クリップスタジオなどが主流です。一応貼っておきますので見てみてください。紙とペンに比べたらだいぶ高いですが、これだけあれば原稿もペンもトーンもいりませんので長い目で見たら安いといえるかもしれません。
ペイントツールのスタンダード【CLIP STUDIO PAINT PRO】
ちなみに私はデジタル環境に移行しようと思い、1日で挫折しました。(1度ならず2度も)向き不向きもあるので、最初から高いお金を払うよりは、まずお試しということで無料のソフトを使ってみるのもおすすめです。↓こちらは無料でもほぼ漫画が1から作れます
ペンは、インクにつけて使います。するとペン先の切り込みの部分にインクが染み込んで、描くことができるようになるのです。サインペンやミリペンとは違い、一度に描ける量はそれほど多くありませんので、何度もインクをつけ足して描いていきます。インクは墨汁が一番リーズナブルですが、乾きが悪いという弱点もあり、専用のものがおすすめ。乾きも早く、消しゴムでこすっても薄くなりません。証券用インクを使う人もいます。
そして、原稿用紙に書いていきます。原稿用紙は普通の紙ではなく、少し厚くて丈夫な紙です。ペンや鉛筆のスクラッチ、インクの水分、消しゴムかけなど、過酷な使用に耐えられなければなりませんので、ペラペラな紙ではダメなのです。ちなみに私はその昔、安いし書きやすいからといって原稿用紙を使わないでコピー用紙に書いて担当さんにもっていったところ、こっぴどく叱られました。コピー用紙なんかに書くやつはどうにもならないレベルの人が多く、他の編集に見てもらえないというのが理由でした。まあコピー用紙では扱いにくいですよね。その昔は画用紙やケント紙という紙に書いていましたが、今は紙も発達しておりますので、専用の原稿描いた方がいいでしょう。↓これが専用の原稿用紙。
専用の原稿用紙はメモリがついており、インクのにじみもないし非常に使いやすいのです。メモリなしで枠線を引くのは非常に骨が折れます。
あとは枠線や効果線を引くための定規です。特別なものではなく、普通の定規でかまいません。
ちなみにペンで線を引くときはひっくり返して使うのがおすすめ。地味なテクニックなのですが結構重要で、意外と誰も教えてくれないので最初は絶対失敗します。
定規をそのまま使って、インクが多すぎたり、筆圧が高すぎたりすると↓このように失敗します。やさしく丁寧に書けば大丈夫なんですが、ちょっと気を緩めるとこうなります。心配な人は定規をひっくり返して使いましょう。
ひっくり返して使うということは定規と紙の間に空間を作るということです。写真の定規はちょっと特殊なのですが、普通の定規でもメモリの部分は斜めカットされているので同じことができます。
2、それから下書き
では、再び工程に戻りましょう。ネームが終わったら、原稿用紙にコマを割り、下書きをします。コマの割り方はすでにネームで検討済みなので、その通りに割っていきます。下書きはペンを入れられるレベルの絵を描きましょう。
3、次はペン入れ!
下書きが終わったらペンを入れていきます。筆を使って思い通りの線を引くのは難しいですよね!それと同じで、ペンで思い通りの線を引くのは非常に難しいものです。でも、ペンが使えるようになるととても表現力が高くなります。練習あるのみです。
4、仕上げ
最後の工程が仕上げです。下書きの線を消して、ベタとホワイトをして、トーンを貼って、原稿を完成にまで持っていきます。プロの場合、仕上げからアシスタントにバトンタッチする場合も多いでしょう。アマチュアの場合はもちろん自分でやらなくてはなりません!これができないとアシスタントにもなれませんしね。それと、仕上げからデジタル作業に移る人もいます。
仕上げにはいくつかの工程がありますので、順番に見ていきましょう。
消しゴム
消しゴムで鉛筆の線を消します。線の太さが足りなかったり、線を書き忘れている場合は、この段階で調整します。下書きの時はアタリの線や失敗の線でにぎやかだった絵が、シンプルになって寂しくなる場合がありますが、これがあなたの真の実力です(笑)苦しいですが自分の実力を直視することも大切。練習を重ねましょう。
ベタ
ベタを塗ります。黒くべたっと塗るのでベタと言うらしいです。マジックや普通のサインペンなども使います。インクを筆につけて塗る場合もあります。線とは違って、黒くなればどんな道具を使ってもいいのです。
効果線
効果線などを入れていきます。
ホワイト&トーン
はみ出た線などをホワイトや修正液で修正します。私がアシスタントに行った先生はみんなミスノンでした。ホワイトをペンに含ませて白い線を引くホワイトペンという技もあります。このときはホワイトを適度に薄めて使います。
そしてトーンを貼ります。トーンは漫画で灰色になっている部分です。アミ点が印刷されているフィルムて、押し付けると接着するシールになっています。この2つの工程、私はデジタルで行います。さっきデジタルは挫折したと言いましたが、仕上げは別です!
仕上げが終わったらようやく完成です!
●1ページ仕上げるのにかかる時間は?
1人で描くと漫画の原稿1枚に8時間くらいかかります。(今回はスピード重視で背景もその他もかなり手抜きなので4時間でした)プロはアシスタントがいるのでもっと早いです。仕上げの工程に入ってからデジタルを使うという手もあり、その場合もっと時間が短縮できると思います。
漫画はこのように作るのです。かなり大変な作業です。でも好きならできます!情熱をもって取り組みましょう!私の原稿が下手なのは大目に見てください!笑
2、漫画のストーリーの作り方
さて、これで満足してはいけません。冒頭に書いたように、漫画はストーリーと絵です。漫画にはストーリーも重要です。漫画の面白さはストーリー7割、絵3割だと私は思っています。ではどうしたら面白いストーリーが作れるのでしょうか。
ストーリーの作り方は人それぞれですし、面白いと思うものも人それぞれです。だから、どんな物語にも共通する面白さはない、と思うかもしれませんが、それは間違いです。誰でも面白いと思わせる方法があります。それは「考え方の変化」です。キャラクターがストーリーの冒頭では「この世は悪い奴ばかりだ」と考えているとします。それが、ストーリーの中で様々な経験をし、物語が終わるころには「世の中にはたまには良い奴もいる」と考え方が変わります。これが考え方の変化です。
この変化をベースとして、世界観や設定や出来事が起こるのが面白いストーリーなのです。
考え方が変化するのが主人公か、主人公以外のキャラクターかで物語のタイプは大きく下記の2つにわけることができます。
1、主人公の考え方が変わる『成長物語』
例えば、主人公が最初は「自分には力がない」と考えています。しかし、隠された力があって、もしくは努力を重ねて力を得て、「自分にもできる」と考え方が変化し、何らかの困難を乗り越えます。このようなストーリーが成長物語です。
2、主人公以外の考え方が変わる『英雄物語』
主人公以外が変化する場合は、主人公は不変です。例えば、主人公以外のキャラクター(以下サブ主人公としましょう)が「私はに価値はない」と冒頭考えています。しかし、主人公がサブ主人公の価値を見出して影響を与えます。そして「私にも価値がある」と考え方を変えて、困難に立ち向かいます。それを受けて主人公が活躍するような話が英雄物語です。(サブ主人公は「困難に立ち向かう」のであって「困難を乗り越える」としなかったのは理由があります。その理由はこちらで)
世の中には様々なストーリーがありますが、基本的にはこの2つしかありません。この考え方の変化が表現されていれば、ある程度の面白さを担保することができます。もちろん、面白さの要素は考え方の変化だけではなく、キャラクター・設定・シーン・展開だったりします。それらの要素が面白ければ、考え方の変化がなくても成立することがありますが、質の高いアイデアやひらめきが必要です。
わかりやすい例に、サスペンスがあります。サスペンスの面白さの要素は様々ですが、最も重要なのはトリックや推理の面白さです。しかし、物語のクライマックスでは「あいつが憎くて殺した。だけど、やっぱり悪いことだった、ごめんなさい」というシーンが必ずあります。犯人の考え方が変わっているのです。この変化がないと、いくらトリックが面白くても、あっさりした読み味になってしまいます。
漫画ではありませんが、ドラマ「相棒」の杉下右京は最後に犯人にカツを入れますね。犯人は明確に後悔したり改心するばかりではありませんが、ストーリーの構造上、犯人の間違った考え方を間違っていると断じて、正しい価値観を示します。それで視聴者はスッキリするのです。
これだけ世の中にストーリーがあふれていると、斬新なアイデアはなかなか思いつきませんが、人間の考え方の変化は不偏で、他の作品と同じでも問題ありません。なので、考え方の変化は誰でも作ることができるといえるのです。なので、まずは考え方の変化をベースに考え、その上で他の要素を加えていくような作り方が面白いストーリーへの近道なのです。
考え方の他に、重要な要素として「事件の解決」があります。事件の解決や、物語の骨格と肉付けについて、もっと詳しく知りたい人はこちらを参考にしてみてください。
そのほかストーリー作りの参考になる記事をここに置いておきますね。
漫画を作ろう!
このように、漫画は長く苦しい工程を経てできています。しかし、情熱があれば乗り越えることができます。ということは、漫画を多くの人に読んでもらおう!という夢をもつことが重要です。夢をもって取り組みましょう!そしてできれば読むときはこの作業を思い浮かべながらじっくり読んでください。血と汗と涙の結晶なのです。
皆さんがんばりましょう!