あらすじの意味と書き方を完全攻略!
誰でも知っているストーリーに関する言葉『あらすじ』
大体の人の理解は、単に「ストーリーの短い版」といったところではないでしょうか?
確かにそれは間違ってはいませんが、正確ではありません。単にあらすじを読む側の立場なら、それでも何の問題もありません。あらすじはあらすじです、と提示されていて、読めばいいだけだからです。
もし、あなたがあらすじを作る側の立場だったら、正確に理解していないと、困ったことになります。ストーリーの短い版、といっても一体どこをどう削ればいいでしょう?オチはつけるべきなの?
答えはあります。
あらすじとは何かを理解して、作るときにどうすればいいか、解説していきます。
この記事の目次
そもそも『あらすじ』って何のためにある?長さは?
あらすじは、漢字で『粗筋』や『荒筋』と書きます。「粗」も「荒」も大雑把、大まかといった意味ですね。『筋』とは筋書、ストーリーのことです。つまり、あらい筋書、大雑把なストーリーのことです。
このあらすじが何のためにあるか、と言いますとこれから読む人が、ストーリーの内容を短い時間で理解するためです。
ですから本編より短く作りますし、短くするためには大事な部分以外は削る必要があります。
あらすじの長さは、文字数で言うと100字から400字くらいで、数十秒から数分で読めてしまうくらいの分量です。(もちろん、長いものも短いものもありますが、基本はこのくらいです。)この長さが重要で、ものとストーリーがどんな長さでも、あらすじは大体このくらいの長さになります。映画だったら2時間あるものを、あるいは小説なら300ページあるものを、あ
るいは漫画なら30巻あるものでも、すべてこの長さでまとめるのですから、大事なところ以外は省いた、まさに粗いストーリーになりますね。
読む側の知識としては、これで十分でしょう。しかし、書く側はそうではありません。順を追って見てみましょう。
オチまで書くのかどうかはあらすじの目的で決める
『あらすじ』にオチまで書くのかどうかという問題があります。
あらすじにオチまで書いてしまったら、本編を読む必要がないじゃないか!という意見がある一方、オチがなければ面白いかどうかわからないじゃないか!
という意見もあると思います。一体、どちらが正しいのでしょうか?
結論から言うと、どちらも正しいのです。2つの意見はあらすじに何を期待しているか、「あらすじの目的」が異なるのです。あらすじの目的に応じてオチを書く場合と、書かない場合まで、無数のグラデーションがあります。
まずはオチの書いてあるあらすじを見てみましょう。
(1)オチが含まれるあらすじ
誰もが知っている「長靴をはいた猫」を例に挙げてみてみましょう。
【長靴をはいた猫】
親の形見に1匹のネコをもらった主人公。何の役にも立たないと悲観していたところ、ネコは突然人語を話しだす。「私に長靴をください。そうしたら、あなたがもらったものはたいしたものだと思うにちがいありませんよ。」ネコは高い知能と権謀術数を駆使してやがて主人公に幸福をもたらす。
よく見るあらすじですね。最後にオチ(結末)が書かれています。書かれているといっても単に「幸福になった。」という程度です。このような「オチが含まれるあらすじ」は物語の全体を簡単に説明することが目的です。このあらすじを読んだ人は、その後に本編を見たり読んだりすることもありますが、それだけとは限りません。あらすじからストーリーを考察したり、他のストーリーと比較したり、単に理解したりします。別に読む予定はないけどストーリーを簡単に知っておきたい、とか誰かに簡単に知らせたい、そのような場合がありますね。
問題はオチですが、どこまで具体的に書くかというレベルは様々です。上記の例では「幸福になった。」ですが、本当の結末は「主人公は一国の主となり隣国のお姫様と結婚、それからはネコは一言もしゃべらなくなった。」というものです。それを単に幸福になったというのか、王様になったとか、お姫様と結婚したというのかは、文字数の制限と制作者の匙加減です。相手がどこまでの情報を知りたいのかという目的に応じて調整すべきです。
たとえば、ある物語について誰かと議論する場面があったとします。そのときは「主人公は一国の主となり隣国のお姫様と結婚、それからはネコは一言もしゃべらなくなった。」というところまで話す必要があるかもしれません。ネコについて少し突っ込んで議論するときには、ネコがしゃべらなくなったことは重要な要素かもしれません。
同じように、誰かに物語を伝えるといった場面でも、友達に先週見た映画を紹介するというような場面もあるでしょう。このときにオチまで紹介してしまってよいでしょうか?もしその人がこれからその映画を楽しもうとしているのでしたら、オチは話さないのではないでしょうか。相手の興味を引く程度に紹介し「その映画面白そうだね、見たい!」という状態になった後に「でも最後主人公が死んじゃうんだよね」などと言った暁にはもう友達ではいられなくなるかもしれません。「最後は悲しい結末になるんだよね」なら許されるかもしれません。このようにオチを入れる入れないにしても、色々なレベルがあり、目的をよく考えることが必要になります。
(2)オチが含まれないあらすじ
一方、オチを書かないほうがいいあらすじもあります。それは、これから本編を楽しもうとする人向けのあらすじです。ストーリーの要点を伝えて、そのストーリーを見てもらうことが目的です。ふたたび長靴をはいた猫を例にしてみましょう。
【長靴をはいた猫】
あるところに粉ひきの親を亡くした3人の兄弟がいました。大抵の兄に遺産は引き継がれ、三男に残されたのは”ネコ”だけ。途方に暮れる三男を前に、ネコが話し出します。「私に長靴をください。私は案外役に立ちますよ。」かわいそうな三男は幸せになれるのか、長靴をはいたネコのミラクルが今始まる・・・!
このようなあらすじもまた、見たことがあるのではないでしょうか。ストーリーの「さわり」はわかりますが、全体像はわからないこともあり、もちろんオチは書かれません。読みたくなる、見たくなるのが目的ですので、”長靴”や”かわいそうな三男”といった、気になるキーワードが入っており、”ミラクル”が起こるんだなという期待感もあおっています。
参考のためにもっと宣伝的にしてみましょう。
【長靴をはいた猫】
ネコがしゃべって長靴をはいてる?!ある粉ひきの息子がもらったネコが国王と仲良しになったり、農民を脅したり、魔王と闘ったり・・・!大冒険を繰り広げる中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジー大作!
もはやあらすじと呼んでいいのだろうか迷うレベルになります。
ついでにもう一つ。非常に抽象度を上げるとこのようになります。
【長靴をはいた猫】
親を亡くし財産も手に入れられなかった不幸な少年に遺されたのは一匹の猫。貧しくても清らかな心を持ってさえいれば人生の富を得ることができる、そんな教訓を長靴をはいた猫を通してファンタジックに描く痛快活劇。
これはあらすじと呼べそうな気もしますが、ストーリーは全然わかりません。
オチがあるもの、ないもの、あらすじとそうでないもの、実は境界はあいまいです。漠然とした「正しいあらすじ」というものはありませんが、「目的に応じたあらすじ」には正解があります。これからあらすじを制作する立場になった場合は目的を明確にすることを意識しましょう。
あらすじは誰向け?プロットとの関係
ここまで見てきたあらすじは誰のためにあるのでしょうか?
あらすじはストーリーを簡単に知るためにあります。物語の受け手のためにあるのです。先ほどのオチがある、ない、両方とも、受け手のためにあるという点では共通しています。
一方、作者のためにある『あらすじ』のことを『プロット』と言います。”作者のために”というのは作者が物語を作るためという意味で、制作の途中段階で使うテクニックという意味です。あらすじとプロットはよく混同されますが、作者が作話用に作るあらすじは正しくはプロットと呼びます。
プロットは作者が物語を作るときに、大雑把にストーリーを書く『物語のダイジェスト版』です。ストーリーを作る際は、頭からどんどん作っていくか、大まかに全体を決めてからディティールを足していくかの2通りがありますが、この大まかに全体を書きただしたものがプロットです。
物語の短い版という意味ではプロットもあらすじと同じなのですが、プロットは物語の大筋以外にも、後々のディティールアップのために作者が必要とする情報も書かれます。また長靴をはいた猫に登場してもらいましょう。
【長靴をはいた猫】
粉ひきの親父が、死ぬ。長男、次男には良い遺産が残され、三男にはネコしか残されない。三男が途方に暮れているとネコは突然しゃべりだし、長靴を要求。ネコは三男を幸せにするため働く。まずは動物を捕まえて国王に献上する。その後も何かにつけて献上を繰り返し、国王に覚えてもらう。・・・・
ディティールとしては長男がもらったのは風車小屋、次男がもらったのはロバです。ネコが捕まえたのはウサギですし、「カラバ侯爵からの送りものです。」という三男の紹介も大切です。しかし、次男がもらったものが荷車でも、ネコが捕まえたのがニワトリでも、カラバ侯爵ではなくトマコマイ侯爵でも成立します。細かい要素はひとまず置いておいて、もっと大切な全体を表現するのがプロットです。最初から長い時間をかけてディティールまで書き込んでいき、最後に整合性が取れなくなったりすることを避ける意味があります。作る側が物語全体を把握するためにあるので、基本的にはオチまであって、整合性や面白さ確認します。
また、作者は時として、自分以外の人と作業をすることがあります。原作者、編集者やプロデューサー、相方などです。彼らに事前に物語を理解してもらうためにもプロットを作ることがあります。完全なものを作るよりも短時間で作れて、理解するのも短時間で済むので、他の人の意見を取り入れた修正が効きますね。
あらすじの書き方
ここまでであらすじがについては理解できたかと思いますので、どうやってあらすじを書くのかという部分に入っていきましょう。
「どうやって、と言われても長いものを短くするのだから、削って短くすればいいだろう」と思うかもしれません。それはそうなのですが、問題は何を削るかという点です。大事な部分を削れば伝わるものも伝わりません。ここでも目的や何が大事かを考える必要があるのです。
ここからは長靴をはいた猫よりもう少し簡単で誰でも知っている桃太郎を例にしてみましょう。
まずは、オチまで書いてあるあらすじを作ってみましょう。物語の主だった展開を中心に書いていき、オチまでを書きます。オチはどこまで具体的にするかがポイントになりますに。
(1)オチがあるあらすじの書き方
【桃太郎】
むかしむかし、おばあさんが川で拾った桃から男の子が生まれました。桃太郎と名付けられた男の子は鬼を退治するため旅にでます。道中、犬、猿、キジを仲間にし、いざ、鬼ヶ島へ。一行は見事鬼を退治し、鬼に奪われた金銀財宝を持って、おじいさんおばあさんの元へ帰りました。
桃から生まれたこと、仲間と出会ったこと、最後の勝利など、ひととおりの内容がまんべんなく入っています。削っているのは、おじいさんおばあさんとの出会いや、キビ団子のくだり、「お腰に付けたキビ団子・・・」のくだりなどです。
必ず入れる必要があるのが「主人公の紹介」と、「主要な事件の解決」の2つです。この2つが入っていれば、他の部分は大胆に削除することができます。「主要な事件の解決」とは桃太郎で言えば鬼退治のような、メインで解決される出来事を指します。参考のため、この2つだけで構成してみましょう。
【桃太郎】
桃から生まれた桃太郎が鬼を退治する話。
身もふたもないようですが、これだけで一応どのような話かはわかりますね。長い話の場合は、どこを削ればいいか迷ってしまいますので、この2つを基礎にするのが効果的です。例えば非常に長い「西遊記」でしたら、このようになります。
【西遊記】
岩から生まれた孫悟空が三蔵法師を助け天竺に経典を取りに行く。
となります。お釈迦様とのエピソード、金角・銀角、八戒、沙悟浄・・・どれも魅力的で入れ込みたくなりますが、最低限の場合はこのようになります。
さて、主人公、事件の解決、この2つは必ず入れるとして、そのほかの事柄は優先順位をつけ、文字数制限の中で調整することになります。桃太郎の場合に戻りますが、最低限の内容の場合の主人公の紹介は「桃から生まれた」ということだけでしたが、通常のあらすじでは「おばあさんが川で拾った桃から男の子が生まれました。桃太郎と名付けられた男の子」としています。文字数を少し多くしたとき、川で拾ったというエピソードは、桃太郎の魅力をより伝えられると考えたからです。
事件の解決は「鬼を退治するため~一行は見事鬼を退治し」です。また、そのほかの重要な要素として、犬、猿、キジを仲間にしたことを加えています。3匹の動物の仲間がいることも桃太郎の重要な魅力だと考えたからです。
何を入れるかは、あらすじ制作者が「読者が何を面白いと感じるか」をどこまで想像できるかによります。キビ団子のエピソードは省かれていますが、これこそが大切だと考える人もいますし、逆に戦利品の財宝の話は不要だという考えもあるでしょう。もちろん、文字数が許せばもっと多くの要素を入れることができますし、与えられた文字数が少なければもっと削らなければなりません。あとはあらすじ制作の技量ということになりますね。
あとは、オチがあるが、明確にしないものも書いてみましょう。やり方としては、「抽象度」を高めるという作業になります。
【桃太郎】
むかしむかし、おばあさんが川で拾った桃から男の子が生まれました。桃太郎と名付けられた男の子は鬼を退治するため旅にでます。道中、犬、猿、キジを仲間にし、いざ、鬼ヶ島へ。一行は見事平和を取り戻すことができました。
鬼を退治した、という”具体的”なことは書いてありません。もちろん財宝のことも書いていません。”抽象的”に結末を書いています。桃太郎は誰でも知っている話ですので、「平和を取り戻した」と言われれば鬼が退治されたんだなと思いますが、鬼と和解したかもしれませんし、鬼は実はただの傀儡で、彼らを操る魔術師を倒したかもしれません。抽象的にすれば、オチがわかりつつもわからないという状態を作ることができます。
ここまででだいぶ理解できたと思いますが、最後にオチのない場合も書いてみましょう。
(2)オチがないあらすじの書き方
むかしむかし、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上からひとかかえもある大きな桃が流れてきました。この桃、なんと中には赤ちゃんが!!赤ちゃんはやがて桃太郎と名づけられ、鬼退治に出発!犬、猿、キジを仲間に大活躍します。
主人公の紹介、事件の解決はオチがない場合でも必須です。ただ、結論を入れませんので、どのような時間がるかだけを書いています。「事件の解決」ではなく、「事件」の部分だけといってもいいかもしれません。ここでは「鬼退治に出発」という部分ですね。その他、魅力的だと思われる犬、猿、キジについては書き、主人公の紹介も厚めにしています。桃から生まれたという生い立ち自体がこの物語の最も面白い部分だと考えたからです。鬼退治に行くクライマックスはもちろんなく、大活躍というだけにして期待感をあおっています。
オチがなく、宣伝が目的のあらすじの場合は”面白そう”ということが伝わることが最も大事なことです。最低限の要素を守り、面白そうと思ってもらえればよいので、どこが一番興味を引くかを考えればよいことになります。物語の一番面白い部分を紹介し、続きが気になりそうな展開までを書けばよいのです。あらすじと言うと、物語全体を紹介しなければいけないような気になりますが、気になる部分が紹介できれば、それがクライマックスである必要はありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?知っているようで意外と知らないあらすじについて理解できたのではないでしょうか?思ったよりも明確な線引きがないなと感じたかもしれませんが、形式はどうでもよく、目的がしっかりしていればいいのです。内容が理解できた上で正しい書き方がわかれば完璧ですね。
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