面白さが100倍になる!キャラクターの作り方
映画、小説、ラノベ、マンガ、舞台など、表現のジャンルはたくさんあります。どのジャンルを専門としていても、人を楽しませるエンターテイメントの作品を作ろうとしているのでしたら『キャラクター』は強い味方になります。作り方を知っておいて損はありません。
キャラクターと一言で言っても、ゆるキャラから、ハリウッド映画の登場人物、お菓子のパッケージについているよくわからないキャラ、ディズニーキャラクターなど、そのイメージは多岐にわたりますが、これらを大別するとアイコン的なキャラと物語の登場人物に分かれます。当サイトは物語作りを主題にしていますので、ここでは『物語の登場人物』に絞って話を進めましょう。
この記事の目次
登場人物の3つの要素
登場人物は何でできているのでしょうか。複雑に見えますが、じつは登場を構成するのは3つの要素しかありません。
(1)設定
(2)外見
(3)エピソード
(1)設定とは、性格、年齢、出身、言語、性別、好きなもの、考え方、恋愛対象、過去・・・など、キャラクターの定義です。
(2)外見とは、見た目の特徴です。身長、体重、髪型、目の大きさ、鼻の形、服装・・・などです。
(3)エピソードとは上記を表現する行動です。物語の中でキャラクターを説明するためには、このエピソードを使います。
たとえば、元気なおばあちゃんという設定のキャラがいたとしましょう。外見は杖をついたいかにもなおばあちゃんです。この設定を表現するために、
「このおばあちゃんは元気なおばあちゃんです。」と書くのは得策ではありません。物語の中ではエピソードで表現すべきです。
「杖をついたおばあちゃんが大きな荷物を背負って、階段を駆け上がった。」
”元気”を表すために、階段を駆け上がるという行動をさせました。
このような表現方法は、小説であろうと、漫画であろうと、映画であっても同じことです。設定をペラペラと説明してはいけません。退屈だからです。
さらに、エピソードを補強するには第3者の評価を加えます。
「杖をついたおばあちゃんが大きな荷物を背負って階段を登ろうとしている。大丈夫ですか、声をかけようと若者が近寄ると、唐突におばあちゃんは階段を駆け上がって行った。元気なおばあちゃんだな、若者は思わずつぶやいた。」
外見は漫画や映像ならば、見せれば済みます。文章なら描写すればいいのですが、設定はこのようにエピソードで見せなければなりません。武勇伝と覚えるといいかもしれません。武勇伝では誰々が~した、と表現されます。これはエピソードそのものです。ケンカがとにかく強いと言われるより、300人を10分で倒したと言った方が伝わるのです。
絵でまとめるとこのようになります。
特徴的なキャラは共感に注目する
愛されるキャラクター、恐ろしいキャラクター、カッコいいキャラクター、嫌われるキャラクター、様々なキャラクターがありますが、作品を作るからには印象に残るキャラクターを作りたいものです。次に印象に残る、特徴的なキャラクターを作るポイントについて説明します。
特徴的なキャラクターは2つの要素でできています。
(1)普通でない要素
(2)共感ポイント
この2つのバランスを変えると無限のパターンを作ることができます。
(1)は普通でない能力や性格、言動、考え方を持っているということです。身の回りの人物、既存のキャラクターを思い出してみてください。皆、普通でない部分を持っています。差別化と考えてもよいと思います。他のキャラクターにない部分を持たせ、差別化するのです。
(2)共感ポイントはキャラクター作りで最も大切な要素です。普通でない要素を設定するのは意外と簡単です。何でもありだからです。そこに共感を作れるかどうかが大きな差となります。
この要素はふつう、意外性をつくる、ギャップをつくる、欠点をつくる、努力をさせるなどという風に言われます。これらは別々のことを指しているように見えますが、実は同じことを言っています。共感できるポイントと、普通でない要素の差のことを言っています。図で表すと、このようになります。
例:欠点・努力など
物語で活躍するキャラクターは人とは違う特殊な能力を持っていたりします。身体能力だったり、頭脳だったり、超能力を持っている場合もあります。このようなキャラクターはそのままでは共感することはできません。すごいとも思えません。自分とは違いすぎるからです。超人が何を考え、どう感じているか、想像もつかないからです。また、現実の人間が行う偉業は(例えばスポーツ選手)自分と同じ人間であるという点ですでに共感できますので、「すごい!」と思えるのですが、架空の世界のキャラクターは人間ではないので、いくらすごいことをして見せても、共感させなければすごいとは思えないものです。
そこで、普通の人間に近い要素を表現するのです。超人的な仕事をこなす中で、たまにはドジを踏んでみたり、完璧な人が時に忘れ物をしたり、栄光の陰でひたむきな努力をしていたり、これを普通ギャップを見せるとか、欠点を作ると言ったりしますが、どちらも共感ポイントを作るという作業なのです。
例:意外性やギャップをもたせる
か弱い女性が恐ろしい殺人鬼だった、鬼教官が実は生徒のことを一番大切に思っていた、といった手法を意外性をもたせると言ったりします。これも共感でひも解くとわかりやすくなります。普通ではない特徴と、普通の特徴をもたせ、その差を大きくすると意外性がある、ということになります。普通の特徴に読者は共感し、共感したところでそのキャラが恐ろしい行動をする、すごい行動をすると大きな驚きとなります。逆に、超人的なキャラが普通の失敗をすると、共感されることになります。
完全なキャラクター
欠点がなく、強い能力を持つ完全なヒーロー・ヒロインのようなキャラクターもいます。逆に全く何もできないようなダメなキャラクターもいます。彼らには一見、共感ポイントがなさそうに見えますが、これも共感ポイントで説明がつきます。彼らは大抵善い行いをするか、しようと考えます。そこが共感ポイントです。善い行いをしようというヒーローの心に共感するのです。
たとえば「私にミスはない、が口癖の天才外科医のキャラクター」がいた場合、共感するのは人を必ず救うという善い行いの部分です。善い行いをしなければ単に高慢で嫌味なキャラクターになりますが、どんな時も人を救うから共感されるのです。
逆に、欠点しかなく、ダメなキャラクターというものもいます。彼らもまた、自分と比べてもダメすぎて共感ポイントがないように見えます。彼らが主人公や、それに準ずるキャラだった場合、物語の中で最終的には善い行いをします。もしくは善い行いをしようと決断します。そこに共感するのです。
脇役
共感ポイントを意識していけば、主要なキャラクターには共感ポイントを作り、そうでないキャラには作らないという調整が効くようになります。1度しか登場しない脇役などは、共感ポイントを作る必要はありません。普通でない特徴をつける必要もないかもしれません。
主人公から作ると他のキャラができる
物語には無限のパターンがあるように見えます。しかし、考え方の変化に注目すると、すっきりと見通すことができます。考え方の変化とは、物語の前後でキャラクターの考え方が変化することです。たとえば、渡る世間は鬼ばかりと考えていたキャラが、ストーリーの終わりには世の中には良い奴もいるという風に変わることです。(詳しくはこちらで紹介しています。)
主人公が変わるストーリーを成長物語、主人公が他のキャラを変えるのを英雄物語と私は呼んでいます。エンターテイメントの物語にはこの2つしかありません。(複合はあります。)
この物語の類型は、そのまま主人公の類型に当てはまります。主人公が変化する成長タイプか、主人公が回りを変える英雄タイプかです。お気づきかと思いますが、じつはキャラクター作りとは物語づくりそのものなのです。
自分が作りたい物語がどちらなのか、つまり主人公はどちらなのかを考えると、多くのことが決まります。欠点があり、読者とあまり変わらないような、共感ポイントが多いキャラが成長タイプで、特殊な才能など普通ではない特徴が多く、共感ポイントが少ないのが英雄タイプです。もしくは共感ポイントはないが、善い行いをするタイプです。
主人公を設定すると、他のキャラクターもある程度決まってきます。英雄タイプの主人公には、考え方を変えるサブキャラが必要です。主人公に反発しているキャラ、考え方が全く違うキャラなどです。彼らが、物語の終わりには考え方が変化します。この立ち位置をライバルや、ヒロインにしてもいいでしょう。
成長物語の場合は主人公の考えが最初間違っているので、正しい基準を示すキャラが必要です。先生のような立場のキャラだったり、ライバルやヒロインでもいいでしょう。
このように、主人公を設定すると、他のキャラが決まってきます。
おまけ
普通でない特徴を考えるは楽しい作業ですが、ここで悩む人はいるかもしれません。無限の可能があるので、何を選ぶかで作家性が最も出るところですし、オリジナリティを出そうと思うと、考え込んでしまう場合があります。
その場合は組み合わせを試してみてください。今までにある要素を、今までになかった組み合わせで組み合わせるのです。たとえばお「寿司やさん」と「殺し屋」はあっても、「殺し屋のお寿司やさん」はないわけです。世の中にはすでに無限のアイデアが出され、完全なオリジナルはないように思えますが、組み合わせの新しさでオリジナリティを出すこともできるのです。
共感が最も重要な理由
最後に、なぜ共感が重要なのかについてお話したいと思います。
なぜ共感が重要なのか、それは人間が相手だからです。漫画でも映画でも小説でも、それは同じです。人間は誰しも心を持っています。人間は、共感したものに心動かされます。心を動かす作品は印象に残ります。人間はそうか、と納得したものを自分の中に受け入れます。受け入れたときにはじめて面白いと感じるのです。だから共感が重要なのです。共感を活用して、良いキャラクターを作ってください。キャラクターを設定したら、エピソードで魅せることも忘れずに。これでストーリーを100倍面白くすることができます。
\キャラクターの基本がわかったら、次はこれ!/