漫画持ち込みレポ【体験談】必要なレベルとネームでも大丈夫か問題
当サイトは漫画、小説、シナリオなど、あらゆるストーリー作りに奮闘する方に役立つことを発信しておりますが、今回は漫画家志望の方のための情報提供です。
当サイトのとある常連さん(以下、仮にKさんとします)から、漫画の持ち込みの体験談を寄稿いただきました。
その方は同じ作品を複数社に持っていったのですが、その時の評価が非常に参考になるものだったので、ここで漫画家志望さんのために共有させていただきたいと思います。
Kさんも、同志の役に立ちますように…!ということでご提供いただきました。
※大事なところは手を加えていませんが、不要なトラブルを防ぐべく細かい部分は変えています。
いちばん注目して頂きたいのは、各誌の評価の違いです。
この違いがどこから来るのか、編集の視点はどこにあるか、どうとらえたらいいのかについて説明したいと思います。
また、持ち込みにまつわる諸々の疑問、持ち込みに必要なレベルやネームでOKなのか等、についても説明してゆきますね。
この記事の目次
持ち込みした作品と作者について簡単に
一応、ストーリーとKさんのスペックを簡単にご紹介。
ストーリー:男くさい男が主人公で、夢の前に挫折した女の子を救う話。
Kさん:漫画を完成させたのは始めて。若めの社会人。
さて、当たり前ですがKさんは事前に編集部に電話で予約をして、1日の中にうまくスケジューリングして3ヶ所に持ち込みされています。その辺はさすが社会人。
3社に持ち込みした結果
1、少年ジャンプ
前提として「夢」というテーマがありがちすぎる。アイディアとして面白くない。今の時代でやる必要が無い。
主人公がかっこよくない。人気出ない。古い。何がすごいキャラなのかわからない
この主人公にキャラクターが皆無。
バトル要素で何のギミックで戦ってどのように勝つのかがわからない。
「心が動くドラマ」に対して「アイディア」が無い。こんな事で悩むなよと思う。
会って数日の人間がきっかけで心が動くと思うか?解決される為に用意された問題のよう。
この敵に襲われたらどうなるのか?読者にこの敵をどう思ってほしいのかよくわからない。
何故、あえて古臭く作品を作るのかわからない。普遍的な細身のカッコイイ主人公にしない理由がわからない。
総評として、この作品を直してどうなるレベルではない。コマの画面の見せ方も近すぎてよくわからない、画力も無い、センスもない、方向性が古すぎる。とりたてて評価出来る所は何一つとしてありません。
→読んでいて心臓バクバクしませんでしたか?笑
ここまで言われると、ちっちゃくなって聞いているしかないですね。Kさんお疲れ様でした。これから持ち込む方に戦慄の内容だったと思いますが、ここでページを閉じず、先に進んでください。
2、ジャンプ+
良かった所
キャラクターを見せようと意識しているのが良くわかる キャラのアピールが出来ている。
頭の中で設計図が良く出来ている。画力は拙いながらも難しい構図に挑戦している。画面構成や演出に凝ったり、画風を変えたりして意識して工夫しているのが良い。
もったいない所
画力がまだまだ追いついていないので画力を上げてほしい。漫画の要素が多すぎてこのページ数では破綻している。
もっと主人公とヒロインを魅力的にする。もっとキャラクターを知りたいと思わせる。
キャラに興味を持たせる。
興味が先に来てから説明をすること。
キャラクターの見せ方を勉強すること。
読者にとってキャラクターを他人にさせない事、「他人事」だけど気になるようにさせる事
もっとページをめくらせるようにする事。
漫画には「面白い」「面白くない」以前に「不戦敗」があるから魅力的な絵、あらすじを大切にする事。
もっと絵を丁寧に描くこと。雑に描くと成長が止まってしまうので全力で描くこと。
(最初のジャンプで古い主人公と言われたので筋肉主人公などはだめなのか?と質問した所)
無個性な漫画になるより個性、性癖がさらせていたほうが良い。さらす事が大切。だけど読者に面白いと思ってもらう事。
君が筋肉主人公をやりたいのなら全力で画力も魅力も作り文句を言わせないようにすること。女キャラももっともっと可愛くかけるようにしたほうがいい。
(打合せの最後に)
作品を見てこの作家が伸びるか否かだいたいわかるが「君は確実に伸びるから頑張ってほしい」と言われました。
→やさしい・・・。実際の編集の態度とKさんの精神状態はわかりませんが、字面だけだと天使。
3、少年サンデー
もっとネームを描く練習をしたほうがいい 32ページのネームを練習して経験値をもっと稼いだ方がいい。
画力も低いから沢山「模写」をすること。 ここ数年で売れている漫画を参考に絵柄、画面構成を学ぶこと。
基本的に原稿が読みづらいから画面構成をもっと学ぶこと。
ヒロインの心が変わるドラマなのに「心が変わった理屈」が特にないからよくわからない
ヒロインが普通すぎる悩みだからもっと追い込んだ方がいい。今回の作品だと二日寝たら解決しそうな悩みだと思う
キャラクターはいきなりは動かせない。「キャラクターは人間」なので人間っぽく動かす事。人間っぽくないキャラクターは怖くなる。
主人公が夢を追求しているキャラクターだが表面しかわからない。キャラクターはしぐさ一つでも構成される。この漫画は他人事になっている。
総評として、次に同じようなドラマを描くのならば「人の心が変化する瞬間に読者が気持ちよくなるようにする事」それを学ぶために色んな漫画、映画などを見て自身が「このキャラいいな」など気持ちよくなった瞬間をもっと学ぶこと。
→「二日寝たら解決しそう」という表現が秀逸。ジャンプは「こんなことで悩むなよ」という突込みだったので2誌のキャラが出ていて面白いです。サンデー編集部は「気持ちいい」って表現をよく使う印象。
持ち込み結果について解説!
さて、以下は私の解説です。
私は当事者ではありませんので、あくまで「想像」であることを先に断っておきます。役に立ちそうなところを自分のために使ってください。
1、志望者に求められるレベルについて
3編集部の反応で、同じところと、異なっていたところがありました。
共通点は、画力が低い、キャラが浅いといったことなどです。これは皆が見てそう思うのですから、その通りなのだと思います。
注目すべきは、3者で異なる部分です。
ストーリーにはその完成度でレベルがあります。わかりやすくするように、便宜的にまとめましたので、こちらをちょっと見てみてください。とりあえずああ、そんなもんか程度で良いと思いますが、詳しくはリンク先を見てください。
これを見ながら、編集者がどこまでを求めているか考えてみると、ジャンプの視点は、レベル4の同時代性まで含んでいることがわかります。
漫画というものは、新人だろうが1作目だろうが何だろうが、面白ければヒットしてしまいますので、ジャンプはそこまでを狙っていることがわかります。
漫画家志望者たちは上記のピラミッドのような構成になっているのですが、ジャンプは最も人気のある雑誌なので志望者が多く、ピラミッドの大きさ自体がとんでもなく大きくなっていると考えられます。なので、その上の方をすくい取るだけでも充分に人が確保できるし、ピラミッドのなるべく上にいる人を探すという視点になっていると思われます。
これに対して、ジャンプ+はWEB漫画というチャレンジ分野に位置しているので、同じ「ジャンプ」とついてもピラミッドの頂点の人が来る確率は相対的に低くなります。なので、可能性にかける、という動きをしています。次回作が面白いかどうかわからないけど、面白くなるかもしれない、面白くなったらラッキーという考え方ですね。
サンデーも今や弱小ですので、基本的にジャンプ+と同様の視点に立っていますが、少し2者と異なるのがストーリーレベル1の話が主になっていることです。話作りの基本の話をしており、その先のレベル2の話はほとんどありません。いろいろ言いたいことはあるが、そこまで達するのが先という考え方をしていると思われます。ワンアイデアや突破力を重視するジャンプに対して、優等生的な作りをするサンデーらしい。
2、漫画の内容について
内容の評価については3者で共通していることは当然直さなくてはなりませんが、最大の違いは「これから面白いものを描ける可能性」の評価についてです。
ジャンプは可能性はない、ジャンプ+は可能性があるかもしれない気がする、サンデーは可能性があまり高くない、という感じで分かれています。
WEBなら可能性があるが、紙ではNG、という風に見ることもできますし、全者違うのだから合う合わないがある、という見方もできます。
どれを取るかは自由ですが、みな違うのだから落ち込まずに頑張る、が漫画家志望としては正解だと思います。売れるかどうかは編集でもわからない、ということが前提です。
ネームで持ち込んでもいいの?
さて、最後にこの話題です。持ち込みの話をすると、ネームでもちこんでいいの?という話題が上がります。原作志望の方はネームまでしかできないでしょうから、見てくれる人を探すか、原作賞に応募すればいいと思いますが、作画までする方は、ここまで見ていただいた方ならわかると思いますが「最初は完成原稿の方が絶対いい」が正しい姿だと感じていただけれるのではないでしょうか。完成原稿はスタートラインです。料理人を目指している人が、レシピだけ見せて、どうだ、おいしそうだろ?というのに似ています。完成した料理を持ってくる人が山のようにいる中で、レシピだけで戦えるでしょうか?よほどの天才なら可能かもしれませんが。
頑張って持ち込もう!
ということで、持ち込みのリアルなレポートをお届けしました。Kさんありがとうございました。結果に一喜一憂せず、直すべきところは直して、考えても仕方ないところは考えないようにしましょう!
そもそも、投稿と持ち込みはどちらがいいのかについては以前書きましたのでこちらをご参考に。
それと、私も持ち込み体験公表してもいいよという奇特な方は、いつでもお待ちしております。※身バレにならないように調整しますのでご安心を。こちらからご連絡ください。
では、みなさん漫画制作頑張ってください。