三幕構成を5秒で解説する【例つき】
三幕構成とはハリウッド映画のストーリー制作術です。
欧米版の起承転結といったところでしょうか。
三幕構成は理解すればそれほど難しくはないのですが、最初は専門用語が多くてとっつきにくいので、わかりやすく解説していきたいと思います。
※三幕構成は、シド・フィールドというハリウッドの脚本家が体系立てた物語の方法論で、日本語の本もあります。
この記事を読んでさらに細かく知りたい人はぜひこちらを読んでださい。
この記事の目次
超大事、三幕構成の使いどころ
まず最初に説明しておきたいのが三幕構成の使いどころです。
前途のように三幕構成はハリウッド生まれハリウッド育ちです。
なので「映画の長さ」を想定して考えられています。ハリウッド映画といえば、長いもの短いものありますが、大体が90分以上120分くらいが普通です。
90分、120分の長さの映像作品のストーリーをどう組み立てるのかという方法論になっています。
なので、実は短い物語にはあまり向いていません。
30cmの定規をイメージしてもらえばよいかと思います。
30cmを測るにはちょうど良いけど、1メートル測るには足りなく、5cmには長すぎる、そんなイメージです。
三幕構成は、ちょうどよい長さに適用したときに最大の効力を発揮します。
例えば読み切りの漫画。
読み切りで短編の漫画はだいたい32ページから45ページくらいです。
漫画のこのくらいの長さは、映像でいうところの10分くらいになります。だからあまり向かないのです。
小説では5万字くらいの短編に向いています。
映画の脚本だと400字原稿1枚が1分換算なので、120分=120枚として48000文字なので、小説の短編くらいがちょうど良いのです。
では長編の小説はどうでしょうか。
一般的な長編小説1本の文字数は10万字くらい(いくらでも長いものはありますが)ですので、三幕構成だけでは少し足りません。
三幕構成5秒で解説するよ
前置きはその位にして、さっそく5秒で解説してみましょう。
はじめに断っておきますが、日本語で数百ページあるシド・フィールドの本(本の内容は三幕構成だけではないですが)を5秒で解説するのは、だいぶ無茶です。
本当に5秒で理解できるなら長い本は不要ないわけです。
でも、ざっくり知るだけでよい、もしくはざっくり知ってから本格的に取り組みたい、という人には有効なのではと思っております。
さあ、行きましょう、5秒解説です。(チコちゃんに叱られるのイメージで)
三幕構成とは・・・
起承転結の起がないヤツである
いかがでしょうか?
難しそうな三幕構成が急に簡単に感じられたのではないでしょうか?
「起承転結」について先に説明しましょう。起承転結は「起」を分離すると非常に理解がしやすくなります。
「起」はその物語の設定の説明です。主人公が誰なのか、舞台はどこなのか、時間はいつなのかを説明します。
これを別扱いにすると残りは簡単です。
承 事件が起こり
転 事件を解決
結 その結果
こうすると起承転結が非常にシンプルに理解できます。(もっと詳しく知りたい人はこちらを読んでください)
そして、この「承転結」は三幕構成と同じなのです。
第一幕 事件が起こり
第二幕 事件を解決
第三幕 その結果
もちろん、起の役割である「設定の説明」は三幕構成でも必要です。
三幕構成の場合は、第一幕に設定の説明を含みます。
これが超約三幕構成です。
三幕構成もう少し詳しく
簡単って言っても限度があるだろ!
という方に向けて、ここからはもう少し詳しく説明します。
三幕構成の最大のポイントは事件が2つ起こる事です。
第一幕
ストーリーの始まりでは設定を説明します。
舞台はどこなのか、時代はいつなのか。主人公が誰なのか、どんな人物なのか、目的は何なのかといったことを説明します。
そして、第一の事件が起こります。
さて、ここが重要です。
この事件の解決に主人公は「失敗」します。
その結果、主人公は大事なものを失います。
大事なものを取り戻すために主人公は先に進まなければならなくなります。
第二幕
第二の事件が起きます。
大事なものを失った主人公はそれを取り戻すために、さらに大きな事件解決に取り組みます。
第二の事件は第一の事件の続きだったり、隠されていた真の事件だったりします。
この事件が物語上のメインの事件です。
様々な困難が現れ、主人公は最初は順調に進むのですが、ストーリーの中間地点(尺で言うとちょうど真ん中にこの中間地点がきます。ミッドポイントと呼びます)でうまくいかなくなり、最悪の状況まで落ちます。
そこから主人公は、事件を解決する決意をし、更に成長し事件に立ち向かいます。
第三幕
成長した主人公が解決困難な事件に立ち向かい、解決します。
解決によって主人公が成長したことが証明され、主人公は最初の事件で失ったものを手に入れます。
具体例1「アナと雪の女王」
理論だけだと抽象的なので、具体例を見てみましょう。
みんな見ているだろうからということで「アナの雪の女王」を例にしてみましょう。
(見ている前提で解説しますので、細かいことは説明しません。また、ネタバレも含みますので未見の方はお気をつけて)
第一幕
アナとエルサの生い立ち、魔法の秘密の説明。
第一の事件、戴冠式でのトラブル。
エルサはトラブル解決に失敗し、王国を失います。アナは愛する姉を失います。
第二幕
第二の事件、王国が雪に閉ざされます。
アナは、エルサを追って、様々なハードルを越えて進みます。
しかし、中間地点で最悪の事態に陥ります。
アナの命にタイムリミットが定められ、信頼していた王子に裏切られます。
エルサはとらえられ、殺されそうになります。
第三幕
アナは瀕死の状態でもエルサを助けに行きます。
そして真実の愛によって、魔法が溶けます。
エルサとエルサは王国と家族を取り戻します。
見事な三幕構成ですね。
具体的な例「スターウォーズ」
理解を深めるために、もう一つ例を見てみましょう。
スターウォーズも誰でも知っていると思いますので、例に挙げました。
第一幕
舞台が宇宙であること、帝国軍の迫害、ルーク、レイアの説明。
第一の事件、ルークがレイアのメッセージを受け取った事で帝国軍の襲撃を受ける。
ルークは家族と平和を失う。
第二幕
第二の事件、帝国軍が宇宙の支配まであと一歩に迫っている。
ルークはオビワンやハンソロ、レイアと出会って困難を乗り越えてゆく。
しかしオビワンを失い、ハンソロとケンカし、帝国の兵器も完成し最悪の状況に。
第三幕
ルークは一人で戦う決心をし、デススターを破壊。
ハンソロとも仲直り、帝国の野望も阻止し、平和を取り戻します。
こちらも見事な三幕構成です。ハリウッド映画は、このようにとても分かりやすく作られています。
映画の創作術だということの意味と活用
ここまでで三幕構成自体のイメージはだいぶ理解できたのではないでしょうか?
もちろんかなり意訳していますので、詳しくは本を読んでください。
ただ、冒頭でも書いた、作ろうとしている物語の長さには注意してください。
三幕構成が短いストーリーには向かないのは、「事件が2つ起こる」ことが最大の理由です。
単純に2つ事件が起こる時点で相当な尺を使ってしまいます。
この記事では解説しませんでしたが、その他の細かなチェックポイントが沢山あり、90分なり120分でちょうど良いように計算されているのです。
三幕構成は、完成された理論ですので、上手く使えば強力な武器になります。
自分が取り組む分野の特性をよく考えて、上手く三幕構成を使いましょう。
短編に三幕構成を使うには
どうしても短編に三幕構成を使いたいという場合は、1つ目の事件をごく短くにまとめるのが一つです。
もしくは中間地点から始めると良いと思います。
すでに事件が起きており、どん底の状態にあり、それを回復する、設定は途中に入れ込む、というイメージです。
この方法論についてはまた後日語っていきたいと思います。
三幕構成がわかったら次はこちら。5秒で解説シリーズ。
こちらも参考にどうぞ。