ストーリーレベルについて【重要な概念】
長年ストーリーを教えて、ストーリーのことばかりを考えてきまして、もはやストーリー哲学者のようになっております管理人バニラです。
普段当サイトはストーリー作りに関する知識の提供をしており、用語や概念の解説が主なコンテンツですが今回は少し違うお話になります。
この記事の目次
新しい概念を考えました!
最近作品に関する議論を聞いたり読んだりしていたところ、ストーリーには結構明確なレベルがあるなと(今頃)気づきました。
つまり、その作品がどの程度のものなのかを、ストーリーレベルに照らし合わせることで、わりと明確に区切ることができます。
この概念は作る人の定規にもなるし、見たり読んだりする受け手の定規にもなるなと思い、ここに定義を提唱してゆこうと思います。
使いどころは2つです。
1、作る側は、自分の作品のレベルがどこにあるのか、先に行くには何が足りないのかを定規を当てることで分析することができます。
2、受ける側(読者、視聴者)は、その作品のレベルがどこにあるか理解することができるので、上のレベルの課題が解決できていないという無用の批判をせずに済みます。
つまり「はいはいができない人」に対して「なんで100m9秒で走れないんだ!」という的外れな思考をせずに済みます!あー、はいはいができないのね。となります。画期的!
そのような時は、はいはいができないことに対して議論すれば建設的です。
自動運転のレベルについて
自動運転のレベルってありますよね。急に車の話ですみませんが、わかりやすいので紹介させてください。こんな感じです。
0 運転自動化なし
1 運転支援
2 部分運転自動化
3 条件付き運転自動化
4 高度運転自動化
5 完全運転自動化
いま実現しているのはレベル2までです。
1は、速度を一定にしたり、車間距離を一定にしたりという運転支援です。
2は高速道路での自動追尾などで、すでに新しい車には搭載されています。
3から先が「勝手に目的地に連れて行ってくれる」という普通にイメージされる自動運転のレベルです。日本では法律の問題もありまだ実現されていません。
自動運転の解説が本稿の目的ではないし詳しくもないのでこのくらいにしておきますが、このようにレベルを分けておくことで、無用な議論を避けることができます。
レベルの段階で「トロッコ問題」を議論しても意味がないのです。
ストーリーレベルとは
ということで、こちらがストーリーレベルです。
※ストーリーレベルは作品のストーリーが「どの程度のレベル」にあるのかについての概念です。この概念は、大ヒット作品から、商業向けプロ作品、趣味の作品、初心者の作品まで、すべてのストーリーがある作品を対象としています。
※バージョン1.0とさせて頂いておりますのは、実用することで磨かれる部分があると思うからです。この先1.1、1.2、2.0などと深化する可能性を含ませております。
※それぞれのレベルの境界線は、概念としてはきっちりと線引きしております。ただ、実際はグラデーションがあり、レベル2と3の間、といったこともあり得ますが、明確に区切ることでどっち寄りなのか考察できるようになっております。
0 矛盾している、破綻している、体をなしていない
1 キャラ・設定・構成・表現が過不足なく表現されているか
2 キャラ・設定・構成・表現の面白さの議論に足る
3 思想・メタ構造の議論に足る
4 同時代性についての議論に足る
順番に解説してゆきましょう。
レベル2
ボーダーラインはレベル2ですので、ここから話してゆきましょう。
マンガでも映画でも小説でも、商業的に世の中に出る作品はたいていレベル2以上ですので、
普通の受け手(消費者、読者、視聴者)はレベル3以下を見たことがないかもしれません。
レベル2は必要な要素がそろっており、矛盾なく語られている作品です。
感覚値でしかありませんが世の中の商業的な作品の80%くらいはここに含まれるイメージです。
土台が整っていますので、その上で、キャラが好きだ嫌いだ、展開が良い悪いといった議論がなされます。
話に矛盾があったりすると、そちらの議論になってしまいがちですが、安心して各要素について語れる状態にある作品です。
余談ですが映画ではよくレベル2に達していないものが見受けられますが、多くの予算をかけて一流のプロが大勢で作っているのでしょうから、なぜあんなことになるのかいつも理解に苦しむのですが、おそらく大勢で作るからコントロールが効かなくなっているのではないかなと、勝手に思っております。映画はさすがに作ったことないので推測ですが。
レベル0
レベル0は全くストーリーの体をなしていないものです。
漫画を描き始めた初心者の作品のようなイメージです。
ストーリー作りの初心者の方、皆そこから出発しますのでご安心を。がんばれ。
レベル1
レベル1は必要な要素が過不足なく語られているかに注意すべきレベルです。
よし、これはできてる、ここもOK、この部分は・・・ちょっと足りない。でも全体としてはまあOK!
というようなレベルです(わかりにくい)
マンガで言えば、なんとなくストーリーの形ができている~雑誌の投稿の賞で受賞するかどうか位のレベルです。
小説だと形ができている~受賞する直前、最終候補といったところでしょうか。
実際のところ、このレベルでとどまる人が99%、越えられる人は全体の1%もいないのではないかと思います。
これも感覚値ですが。
ただ、このレベルは凡人でも正しい努力をすれば突破できます。
少なくとも突破率1%と言うことはなく、20%位には上げることはできます。
ストーリーを作る方でこのレベルを突破したい方はこちらも見てみてください。
レベル3
レベル3は各要素に問題がなく、その上で作品の根底に流れる思想や、メタ的な構造について議論が及ぶレベルです。
メタについてはこちらもご参照を。
ストーリー一般という広い概念の話をするときに、何を例に持ってくるかいつも迷うのですが今回は「水戸黄門」を例に出してみましょう。(古い)
まあ名前くらいは聞いたことがあるでしょうという前提で行きます。知らない方は検索してみてください。
水戸黄門の思想は「勧善懲悪」です。悪いことをした代官が、水戸黄門に懲らしめられるという内容です。
あ、アンパンマンでもよかった。
各要素については充分に議論に足り、好まれている前提ですと、次の議論は思想の是非になります。
勧善懲悪が好きか嫌いか、良いか悪いか、善側のその価値観は正しいのかといった議論です。
いや、私はガンダム的な、敵にも敵の論理がある方が好きだ、そっちの方が優れている、という方もいたり、
いやいや勧善懲悪こそ古来から作品の作法である、という方もいるでしょう。
キャラや、話の展開などは充分に完成されているからこそ、そういった議論に至るわけです。
また、水戸黄門は権力者(副将軍です)であり、悪代官は役人であり、印籠を見ただけでひれ伏すというのは、
お上に弱い日本人の古き体質そのものであり、水戸黄門がおじいちゃんたちの間で流行っていた昭和の時代にこそ受け入れられた、
といったようなメタの議論ができるのもこのレベルからです。
レベル4
同時代性というのは、世の中の流れと合致しているかという視点です。
レベル3に近いのですが、同時代性がある作品のみがヒット作品となることを考えると、
ストーリーレベルの1段階として加える必要があるかなと考えております。
水戸黄門は昭和の時代には人気がありました。
しかし、今は放映されていません。されてる?かもしれないけど、昔ほどではないでしょう。
勧善懲悪が時代に合わなくなってたからかもしれませんし、白髭のおじいちゃんが主人公というのも受け入れられないのかもしれませんし、権力者と権力に弱い敵という構造も今風ではないからかもしれません。
いくら優れた作品でも、時代に合っていないと多くの人の共感は呼べないのです。
このレベルに達す作品はこれまた感覚値ですが数年に1つという程度かと思います。
物語を作る方の究極はレベル4に達することですが、ちょっと神がかった力が必要になるのではないかと思いますので、
まずは自分のいるレベルを突破することを考えるのが賢明でしょう。
ということで、このようにレベルをわけて考えることで、作品の位置がわかり建設的です。
今の人が水戸黄門を見て「つまんねー」と言ったときに「レベル3とか4の話だな」と考えて同時代性について語ることができたらとても有意義ですね。
ストーリーレベルを活用して有意義な作品生活を
ということで、「ストーリーレベル」について勝手に設定して勝手に解説してきました。
みなさんも使っていただけたらとても幸いです。(それとは関係なく私は勝手に使いますが)
当サイトを見ていただいているストーリー作りに四苦八苦している方は、レベル3に到達するのが第一の目標です。
レベル2の突破は簡単ではありませんが努力次第で突破可能です。(それ以上はまた別の次元になってきます)なかなか到達できない時、または自分がどのレベルにいるかわからない時はお気軽にご相談ください。
いつでもお答えしますし、この記事の作者がTwitterでお答えします! https://twitter.com/storymaker2015
もし独学で行きたい場合はこちらも参考になると思いますので見てみてください。