ハイファンタジーとローファンタジーの違いって?
映画や漫画、小説などの創作のジャンルのひとつに「ファンタジー」があります。
「ファンタジー」というと剣と魔法やドラゴンが登場するヨーロッパ中世的な世界観の作品をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、「ハイファンタジー」と「ローファンタジー」といわれるとピンとこないかもしれません。この2つの違いは何なのでしょうか?
そもそもファンタジーって?
まず簡単にファンタジーについて考えてみましょう。
ファンタジーというと、どんなイメージがあるでしょうか。
恐ろしい魔物やドラゴンが登場する、幻想的な景色が広がる、エルフやドワーフのような種族が暮らしている。
車や電気はなく、銃もなく飛行機もないが、魔法の力で大きな乗り物が空を浮いたりすることがある。
舞台はなんとなくヨーロッパの中世のような景色である。
大体の人がそのようなイメージを持っているのではないでしょうか。
これらのイメージの大部分はファンタジーの元祖、1950年代に出版されたトールキンの「指輪物語」の影響から生まれています。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」で知った方も多いかもしれません。
ヨーロッパ中世風の世界観で、剣と魔法、ドワーフやエルフが登場します。
後の多くの作家が指輪物語に影響を受けて作品を作り、それを見たさらに後の作家が影響を受け、トータルとして上記のような共通する世界観が作られました。
一方で、西洋風ではなく、中国風、中東風、日本風、または地球上のどの文化とも似ていない世界観の作品をファンタジーと呼ぶこともあります。
ファンタジーという言葉に明確な境界はなく、基本的には「舞台が現実と全く異なる異世界の話」をファンタジーといってよいと思います。
創作は法律でも学問でもありませんので、実はファンタジーには明確な定義がないのです。
ハイファンタジーとローファンタジーの違い
ハイファンタジーとローファンタジーの違いは何でしょうか。
この2つの違いは、現代とのつながりがあるかどうかです。
現代の要素が入っているのがローファンタジー、入っていない純粋なファンタジーをハイファンタジーという、という風に理解すればよいと思います。
まずはローファンタジーから詳しくみてみましょう。
主人公が現代から迷い込んだり、転生したりするのがローファンタジーです。いわゆる異世界転生もこちらに含まれます。
ローファンタジーの特徴は、読者や視聴者が物語に非常に入り込みやすい点にあります。
読者や視聴者は、現代の基準でファンタジー世界をとらえることができるので、より世界観が理解しやすいのです。
このような区分の元では、代表的なローファンタジーは指輪物語と共に世界三大ファンタジーと呼ばれる「ナルニア国物語」です。「ハリーポッター」もローファンタジーです。中世風というくくりを除けば「ピーターパン」や、「千と千尋の神隠し」もローファンタジーということができますね。どれも主人公は現代からファンタジーの世界に入り込みます。
この逆がハイファンタジーです。
現代の要素が入っていなく、純粋にファンタジーの世界内で完結します。
独自の用語や、神話から引用した用語、エルフやドワーフといったファンタジーの成立の歴史の中で使われてきた用語が登場するので、読者や視聴者には予備知識や読解力が必要になります。この難易度の高さからハイと名づけられているのも納得できるのではないでしょうか。
代表的な作品は「指輪物語」や「ゲド戦記」が挙げられます。
指輪物語やゲド戦記を読んだことがある方はわかるかと思いますが、ハイファンタジーは非常に敷居が高いので”ハイ”と呼ばれるのも納得できます。
ちなみに構造を図解すると下記のようになります。
ローファンタジーは主人公の目線が読者の目線とイコールになりますので、現代の用語を使って描写することができます。
主人公も現代の用語を知っているからです。例えば、大きな空を飛ぶ乗り物について「タンカーような乗り物が宙に浮いている」という風に描写できます。
逆に、ハイファンタジーでは、現代の用語を使わないように注意しなければなりません。
「●●(専門用語)が宙に浮いている。●●とは、大きさは人間の背の高さの10倍ほどもあり、○○(別の専門用語)ような形をしている」というような描写になります。そのため読者の読解力が必要になってきます。
歴史的に考えると、ハイファンタジーが先に登場し、ジャンルとして確立。多様化する中でローファンタジーが登場。その後、”言葉として”2つを区別するために、まず「ハイファンタジー」という用語が登場し、「ハイ」と対になる形で「ローファンタジー」という用語ができたのではないかなと思います。※この辺は推測です。
結局分類する意味は?
ハイファンタジー、ローファンタジーの違いと特徴について解説してきましたが、区分があいまいな作品もあります。宮崎駿の「ハウルの動く城」は現代とつながっているようにも見えるし、そうでもないようにも見えます。同じく「風の谷のナウシカ」も現代の遠い未来の話のようでもあります。
ナルニア国物語をハイファンタジーだとする人もいれば、指輪物語だけが唯一のハイファンタジーだという人もいます。創作は法律でも学問でもないので、その作品がどの区分なのか明確にする意味はあまりなく、大体このようなものだと理解しておけば充分ではないかと思います。
ファンタジーを作りたい
ファンタジーは、かつては高度に文学的で一部の人だけが楽しめる敷居の高いものでした。
神話の知識や先行する作品の知識が必要なものも多くありました。しかし、長い歴史の中でファンタジーの作品数が増え、一般の認知度が上がり、親しまれるようになりました。
さらに現代要素を入れることで、ファンタジーの敷居はより低くなりました。異世界転生など、今ではローファンタジーが全盛です。
ファンタジーを作りたいと思った場合、難易度が低いローファンタジーから入るのは、人気もありますし、ひとつの手だと思います。
一方で、文字通り世界を一から作り上げることができるハイファンタジーは作家にとって究極の憧れです。
いつかは挑戦してみたいものですね。