文章を書くということは文字で何かを伝えるということです。ですから、最も良い文章は伝えたいことが正確に伝わる文章でしょう。
文章の種類によって求められるものは異なります。文学だったら「オリジナリティのある文章」かもしれないし、論文なら「正確な文章」、WEBのライティングならば「わかりやすい文章」かもしれません。でもどの文章にも共通するのはやっぱり、伝えたいことが伝わるということです。
では、どうしたら伝わる文章を書くことができるのでしょうか。
伝えたいことを伝えるためには、大きく分けて2つの観点が必要です。一つは文章を正しく書くこと、もう一つは内容を伝わりやすくすることです。
この記事の目次
〇内容と構成を考える
ひとつめは、正しい構成で伝えることです。構成とは、内容をどのような順番で並べるかということです。例えば「カレーの作り方」を説明するとしましょう。相手が何も知らないという前提だとしたら、どんな内容から説明するのが適切でしょうか。
カレーの作り方に関する知識はこのようなものがあります。
・カレーとは料理である。
・スパイスが効いた辛い料理。
・ジャガイモ、にんじん、玉ねぎを皮をむいて切って入れる。
・具を鍋で煮て市販のカレールーを入れる。
・ご飯にかける。
・インド発祥し、ヨーロッパでアレンジが加わったものが日本のカレー。
・我が家は週に1回はカレー。
・調理器具は包丁まな板、鍋が必要。
・ジャガイモ・にんじんの皮はピーラーでむいてもよい。
この中でどの内容を、どのような順番で伝えるのかを考えてみてください。ポイントは誰に伝えるのかを考えることです。
相手が一般的な日本人でしたら、「カレーとは料理である」の説明は不要でしょう。また、料理の方法が知りたい人には「インド発祥し、ヨーロッパでアレンジが加わったものが日本のカレー」はあまり興味がないかもしれません。しかし、カレーの文化について調べている人には知りたい内容かもしれません。「我が家は週に1回はカレー」はあなたの知り合い意外は興味がないでしょう。(知り合いも興味がないかもしれませんが)
このように内容を選択するのが最初のステップです。大抵は何かを伝えたいと思った時点で自分の中で取捨選択されているものですが、迷ったら何を伝えるべきかの視点で検討してみましょう。
それから、並べる順番を考えましょう。
時系列に並べるのが基本です。
①調理器具は包丁まな板、鍋が必要。
②ジャガイモ、にんじん、玉ねぎを皮をむいて切って入れる。
③具を鍋で煮て市販のカレールーを入れる。
④ご飯にかける。
時系列とは前提になる条件を先に提示していくということです。前提の話をしないと、読んでいる人は理解ができなくなります。
①調理器具の話をしないで、②調理の話をしてしまうと、何を使って皮をむくの? という話になってしまいます。②具の話をしないで③具を煮る話をしてしまうと、具は何なの? ということになりますね。
カレーの話はとても単純なのでもう少し複雑な例も見てみましょう。
・東京の人口は1300万人
・日本の人口は1億2000万人
・東京の人口は日本の人口の10%強を占めている
・東京は日本一重要な都市だ
このような内容を伝えるとき、どのように並べるのが適切でしょうか。
東京が一番重要だということを端的に伝えるには下記のようになるでしょう。
①東京は日本一重要な都市だ
②東京の人口は1300万人
③日本の人口は1億2000万人
④東京の人口は日本の人口の10%強を占めている
①(だから)東京は日本一重要な都市だ
興味を持たせて語っていくにはこのような順番がいいかもしれません。最初に一般に知られていることを書いて、抵抗感なく話に入ってくることができません。
①日本の人口は1億2000万人
②東京の人口は1300万人
③東京の人口は日本の人口の10%強を占めている
④東京は日本一重要な都市だ
もしくは、興味を引きそうな事柄を先にするのもよいかもしれません。
①東京の人口は日本の人口の10%を占めている
②日本の人口は1億2000万人
③東京の人口は1300万人
④東京は日本一重要な都市だ
小説などのストーリーにも構成があります。物語の場合、参考になるのは昔から使われている考え方「起承転結」です。起承転結について詳しくはこちら参考にしてみてください。
構成は文章の種類によって変える必要があります。ビジネスの文章でしたら、結論を先に書くほうが良いかもしれません。論文も同様です。しかし感想文や小説では結論は最後でしょう。結果が先にわかる小説は面白くないですね。大切なのは構成を意識して、相手や目的によって組み立てるということです。
〇正しい文章を書く
もう一つは、正しい文章を書くことです。伝えたいことを伝えるためには、正しい文章を書くことが一番の近道です。正しい文章とは、基本的には正しい文法で書くということです。最も多くの人が理解できる文章のルールが文法なのですから、これに従えば多くの人にって理解しやすい文章になるのです。
文法などというと拒否反応を起こす人もいるかもしれませんが、ここで言う文法はそれほど難しいものではありません。確かに文法の中には、活用や品詞など難しい部類のものもありますが、必要なのは主語述語や、修飾語と言った簡単な部類の文法です。このような基本的な文法を守るだけで、かなり文章は伝わりやすくなります。順番に見ていきましょう。
1、主語と述語
主語とは、誰が、何がを指す言葉です。述語は、何をした、何だにあたる言葉です。忘れてしまった人でも、例文を見てみればすぐに思い出すでしょう。
①僕は、小学生だ。→【主語】僕は、【述語】小学生だ。
②僕は、走った。→【主語】僕は、【述語】走った。
主語と述語を意識して書く、これが1つ目のコツです。とても簡単なことですが、文章が複雑になってくると間違いやすくなります。
例文を見てみてください。
日本の首都東京は人口1300万人、日本の人口のおよそ1割強を占めており、活気にあふれているが決して住もうとは思わない。
一見、正しい文章のように見えるかもしれませんが、この文は間違っています。何が間違っているかわかりますか? まず主語を見てみましょう。主語は何でしょうか。
東京は
ですね。述語はどれでしょうか。この文章には3つの述語があります。
占めており
活気にあふれている
思わない
この3つの中で、「東京は」が主語ではないものがあります。
それは「思わない」です。思わないの主語は東京ではありません。思っているのは人々であり、東京は生き物ではないので思うことはできません。「東京が思う」という文学的な表現はありますがベーシックな文章ではあまり使いません。
ただしくは、「思う」に対する主語「多くの人は」などを入れます。
日本の首都東京は人口1,300万人、日本の人口のおよそ何割を占めており、活気にあふれている。が、多くの人は決して住もうとは思わない。
このように、主語と述語は対応していなければなりません。主語が省略が可能なことが事情をややこしくしています。主語を省略していいのは、述語に対応する主語が明確な場合です。この部分に注意して、主語述語を対応させましょう。
2、主語を省略する
日本語の主語は省略ができます。
主語を省略すると先の例のようにわかりにくくなる場合もあります。しかし、上手く省略すれば読みやすい文を作ることができます。
私は高尾山に登るため、朝5時に私は起き、私は新宿から京王線に乗り込んだ。
この文章は全部の述語に対して主語を入れています。非常にしつこい文章だと感じるでしょう。主語を適度に省略することで、文章はわかりやすくなります。
私は高尾山に登るため、朝5時に起き、新宿から京王線に乗り込んだ。
1、で紹介したように、省略していいのは何が主語か明らかな時だけです。上記の例文は「私」が主語ですから、省略ができますが、主語が明らかでないのに省略すると文章が分かりにくくなるのです。
3、修飾語
修飾語は、単語を詳しく説明する言葉です。
美味しい料理→【修飾語】美味しい
そこに立っている男の子→【修飾語】そこに立っている
修飾語自体は特に難しくありませんが、注意すべきは修飾語の位置です。
まず、2つ以上の修飾語があるときです。
恐ろしく美味しい料理
美味しく恐ろしい料理
修飾語は「美味しい」「恐ろしい」ですが、順番を変えただけで意味が全く異なってしまいます。「恐ろしくおいしい料理」はとても美味しい料理ですが、「美味しく恐ろしい料理」は美味しいのでしょうが何かのリスクがある料理でしょう。
また、修飾語が修飾する語句と離れている時も注意が必要です。
美味しいお蕎麦屋さんのてんぷら
美味しいのがてんぷらなのか、お蕎麦屋さんなのか、両方なのかが不明瞭です。
「お蕎麦屋さんの美味しいてんぷら」でしたら、美味しいてんぷらの話にもとれますし、一般的にお蕎麦屋さんのてんぷらがおいしいという意味にもとれます。
「美味しいお蕎麦屋さんのてんぷら」でしたら、評判のお蕎麦屋さんのてんぷらという意味になります。
基本的には、就職したい語句(被修飾語と言いますが、用語は覚える必要はありません。)と修飾語を近づけた方が意味が明確になります。
4、文章の長さ
一文は、長くても短くても読みにくいものになります。
東京の人口は1300万人で、日本の人口は1億2000万人、東京の人口は日本の人口の10%強を占めているので、日本一重要な都市だ。
非常に読みにくい文章です。この文に言いたいことが4つも入っています。
①日本の人口は1億2000万人
②東京の人口は1300万人
③東京の人口は日本の人口の10%強を占めている
④東京は日本一重要な都市だ
2つくらいの内容で文章を区切ると、すっきりと読ませる事ができます。
日本の人口は1億2000万人に対し、東京の人口は1300万人。東京は日本の人口の10%強を占める重要な都市だ。
また、短すぎるのも読みにくいものです。
日本の人口は1億2000万人。東京の人口は1300万人。東京の人口は日本の人口の10%強を占めている。東京は日本一重要な都市だ。
一文で伝えたい内容を整理して、適度な長さを意識しましょう。
5、接続詞
接続詞とは「しかし」「だから」「そして」「また」など、前後の文章の関係性を明確にしてつなげる言葉です。下記のように使います。
東京は便利な都市だ。しかし、住みやすい都市ではない。
接続詞を使いすぎるとしつこい文章になります。読者は前後の文章の関係性は文脈で理解できるので、多用を避け、特に強調したいときにだけ使う、という意識で使いましょう。
【多すぎる例】
東京は大きな都市だ。だからたくさんの人が住んでいる。だから交通網も整備されている。さらにお店も沢山ある。したがってとても便利な都市だ。しかし、住みやすい都市ではない。
【適切】
東京は大きな都市だ。たくさんの人が住んでいる。交通網も整備されている。お店も沢山ある。とても便利な都市だ。しかし、住みやすい都市ではない。
6、句読点に気を付ける
句読点とは「、」や「。」です。「、」が読点、「。」を句点と呼ぶので、あわせて句読点と呼びます。「。」をつける位置は文末しかないので誰でもわかるのですが、「、」の位置にルールはありません。とはいえ、どこにどれだけ打ってもいいわけではなく、適切な量で、適切な位置に打たないと非常に読みにくくなってしまいます。
いくつかの点を打つポイントがあるので、確認しておきましょう。
①主語と述語がでてきたタイミング
主語と述語が1つの文章に複数入っている場合は、主語・述語のセットが出てきたら区切るとよいでしょう。主語と述語が2つ入った文を見てみましょう。
カエルが池に飛び込んだ後に魚がはねた。
この文には下記2つの主語述語のセットが入っています。
①【カエルが】池に【飛び込んだ】
②【魚が】【はねた】
①と②の間に点を打つと下記になります。
カエルが池に飛び込んだ後に、魚がはねた。
②意味を特定させる
点の位置によって文章の意味を変えることができます。先ほどの修飾語の説明で出てきた文に点を打ってみましょう。
①美味しい、お蕎麦屋さんのてんぷら
②美味しいお蕎麦屋さんの、てんぷら
①はお蕎麦屋さんのてんぷらが一般的に美味しいという意味になります。もしくは「お蕎麦屋さん」が特定のお店を指していたら、そのお店のてんぷらがおいしいという意味になります。
②は評判のお蕎麦屋さんのてんぷらという意味になります。
このように、点の位置で意味を明確にすることができます。意味があいまいに伝わりそうな部分では点を使いましょう。
③強調する
点を打つと文章が途切れ、切れたところが目立ちます。
①美味しい、お蕎麦屋さんのてんぷら
②美味しいお蕎麦屋さんの、てんぷら
①は美味しいが目立ちますし、②はてんぷらが目立ちます。目立たせたい部分に点を打ちましょう。
④文書を音読した場合を意識する
文章を音読したときに途切れる部分に打つのも一つです。読者は、頭の中で文書を音読しているので、音読の際に息継ぎする部分に打つと、心地よい文章の長さになります。
7、語尾を工夫する
語尾がバラエティ豊かに変化すると、読みやすくなります。
日本の人口は1億2000万人です。これに対し、東京の人口は1300万人です。東京は日本の人口の10%強を占める重要な都市です。
語尾がすべて「です。」よりも、
日本の人口は1億2000万人です。これに対し、東京の人口は1300万人。東京は日本の人口の10%強を占める重要な都市なのです。
です、体言止め(名詞で終わる)、なのです。というように語尾が変わっています。単調な文章にリズムが生まれ、読みやすく、理解しやすくなります。
文章の書き方のコツはこちらでも詳しく書いていますので、見てみてください。
まとめ
文章の内容と構成、誰にための文章か考え、正しい文章を書く、それが伝わりやすい文章につながります。どのようなタイプの文章にもある程度共通することですので、ぜひ意識して取り組んでみてください。
その他役立つ情報
最後に、文章を書く上で役立ちそうな情報を置いておきますね。ぜひ参考にしてみてください。