張る?回収する?伏線の意味を120%理解する解説
「伏線を張る」「伏線の回収がすごい」「伏線が回収されてない」
日常生活でもたまに聞く「伏線」(ふくせんと読みます。)
辞書を引くと
「後の展開のために、前にほのめかしておくこと」
??
さっぱりわかりません。
一般の方なら、そんな状態でもいいのでしょうが、
物語を作る人は明確にわかっておいたほうがいい言葉の一つです。
ここでは、作家志望の方のために、伏線を色々な方向から
いまだかつてない詳しさで説明していきます。
この記事の目次
「ご都合主義」から「伏線」の意味を理解する
「伏線を使った物語」の反対は「伏線がない物語」ではありません。
反対は「ご都合主義」です。
ストーリーにおける、やってはいけないことランキングトップ5に必ず入るあいつです。
伏線を理解するために、遠回りのようですが、
まずはわかりやすいご都合主義を理解しましょう。
ご都合主義とは、作者の都合で何でもかんでもできてしまうことです。
物語の中で作者は万能の神です。
一文無しが1日で大金持ちにもなれるし、一般人が王様になったり、死んだ人もよみがえります。
しかし、神だからと言ってルール無用で物語を展開すれば、
物語に緊張感がなくなり、成立しなくなります。
例えば
主人公が絶体絶命のピンチ!しかしこの前死んだあいつが、実は生きていて救ってくれた。
これが無条件に許されるなら、
絶体絶命のピンチすら意味を成しません。
なぜなら、たとえそこで主人公が命を落としても、
同様の「ご都合」によって生き返るかもしれないからです。
これを効果的に防ぐのが「伏線」です。
因果の因を隠すことが伏線
因果応報などといいますが、
物事には原「因」と結「果」があります。
この、
1、結果だけを出してしまうのがご都合主義
です。
原因をすっ飛ばしてしまうので、読者は事態が呑み込めません。
すると、読者は原因を自分で考えることになりますが、原因なんてないので、ああこれは作者のご都合なのだなと興ざめすることになります。
2、原因があって結果を出すのが普通の展開
普通は原因があって、結果があるという風に時系列に沿って話が展開します。
「これからどうなるんだろう」というのが読者の印象です。
3、原因が隠れていて、結果が出て、あとで原因だったことに読者が気付くのが伏線です。
原因が隠れているとは、さりげなく提示されており、
その時は原因と気づかない状態です。
そして、後で振り返ると、あれが原因だったのだなと気づくのです。
伏線の効果は主に2つ
以上が伏線の概念ですが、
物語上の効果としては、大きく2つがあります。
1、予想外の展開を無理なく起こすことができる。
原因が明確なら、結果はわかりきっています。
わかりきっている結果を見るのは、面白くありませんね。
しかし、原因が隠れていれば、突然、結果があらわれたかのように読者に映ります。
その際、読者は原因を探そうとします。
(ここで原因がないのはご都合主義でしたね。)
このタイミングで、過去にさりげなく示した原因を明かすのです。
そうすることで、インパクトある展開に無理がなくなります。
2、原因と結果の関係を人は知りたがり、そこに快感がある。
人は原因を知りたがるものです。ニュース番組を見てみてください。
結果の説明の後は原因の説明です。
「火事が起きた」、だけでは終わらず、「放火だった」とか、
「寝タバコ」だったとかの原因がつくのです。
しかし、これを順当に見せたのでは面白くありません。
放火したら火事になるに決まっています。
結果の後に原因を示すことでこの快感を作り出すことができます。
「フラグ」は似ているように見えるけど「伏線とは」異なる
近い言葉に「フラグ」があります。
が全く内容は異なります。
例えば
「Aさん:台風が来ている。ちょっと畑の様子を見に行ってくる!」という状況に対し、
「死亡フラグが立った」等といいます。この後Aさんは氾濫した川などで流されてしまったりします。
また、「Bさん:この戦争が終わったら、あの子と結婚するんだ。」これも死亡フラグです。
その後Bさんは戦死してしまいます。
最近の言葉ですが、要は前フリです。
「このような展開になったときは、このような結果になる」というパターンが
読者の経験の中から出来上がっており、「このような展開~」が起こると、
「フラグが立った」というのです。
「フラグ」は伏線と同じく「回収」等といわれますので、ややこしいのですが、伏線とは違います。
フラグは単に「展開あるある」「よくあるパターン」です。必ずしも「原因」になってはいませんし、「隠れて」いないときもあります。
「謎」は「伏線」とかなり似ているが、厳密には異なる
伏線に似た要素に「謎」があります。
この2つはとてもよく似ています。
「謎」は結果が先にあり、原因が説明されることを期待させる演出です。
「あの原因は何だったんだろう」という問いかけが読者に共有される状態です。
「伏線」は隠れた原因があり、結果があり、あとで原因だったことに気付く演出です。
構成としては、伏線は時系列、謎は逆です。
共通点は、伏線と同じ2つの効果が得られることです。
※効果は同じですが、もちろん、印象は違います。
(2つとは前述の「インパクトある展開が可能になる。」「原因を知る快感を与えられる。」ことです。)
隠れてるとはどういうことか例で確認する
さて、ここまでで伏線は概要は理解いただけたかと思います。
原因が「隠れている」ことが重要なポイントになります。
この隠れているとはどのようなことでしょうか。
簡単に言うと
原因と気づかない形で提示されている。ということになります。
例外はもちろんあると思いますが、たいてい下記のように提示されています。
「別の物語上の役割として提示されている」
ここまで来ると、概念だけだとわかりにくくなりますので、
例で確認してみましょう。
(例)
前回の戦いで崖から落ちて戦死したA。
残るBたちは新たな敵と戦ってピンチに陥る。
そこに死んだはずのAが現れて、ピンチを救った!
小学生でも考えそうな内容ですが、わかりやすいのでこの例で確認していきましょう。
この前段にこのようなやり取りを入れます。
A「俺はどんな高いところから落ちても着地できる猫の能力を持っているんだ」
どんな能力やねん、という突っ込みはおいておき、
これを隠すには「物語上の別の役割」を与えます。
「戦いを前にしたBたちとの最後の団欒」という役割を加えてみます。
————————————–
A「俺はどんな高いところから落ちても着地できる猫の能力を持っているんだ」
B「そんな能力聞いたことないぜ、できるもんならそこの屋根から飛び降りてみろよ」
A「おい、本気にしてないな!本当だってば」
B「うそつけ、いつもお前はほらばかり吹くよな」
A「本当だって!」
一同笑う。最後の夜が更けていく。
————————————–
一見すると、単に冗談を言い合っているように見えます。
そして、Bたちのピンチを救った後には以下のように原因であったことを明確にします。
A「言っただろう、俺はどんな高いところから落ちても死なないって!」
これが、「隠す」ということです。
かなり無理やりな例でしたが、理解するにはこのくらいのほうがいいのです。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。
伏線の意味、120%理解できたのではないでしょうか。
伏線を効果的に使って、スリリングな展開を作りましょう。
おすすめの記事
展開を作るのに必要なのは構成です。こちらも確認しておいて損はないですよ。
>>構成の意味とは?物語作り/話し方/プレゼンにも【例あり】
伏線と似た用語に布石があります。これについてもう少し知りたい人はこちらもおすすめです。