アニメ、ドラマ、マンガに小説『引き』って?作り方も紹介してやんよ?
アニメやドラマ、マンガに小説、ストーリーには『引き』という用語があります。
引きは、「ストーリーの続きを見たくなる仕掛け」のことです。読者にこの先一体どうなってしまうのだろう、そう思わせてつい先を見てしまうような話作りのテクニックのことを言います。
一言で言えば上記が答えなのですが、実は意外と奥が深い引きのテクニックについて、必要性、種類、歴史、作り方など詳しく解説してゆきましょう。
この記事の目次
なぜ引きが必要なのか
漫画でも小説でも、ストーリーを楽しむ読者には大きな選択肢が与えられています。それは読むのをやめる、見るのをやめるという選択です。気に入らない、面白くないものは読まなければいいのです。
ストーリーの送り手にとっては、この離脱は最大の敵です。後半に行けば面白くても、最後のどんでん返しも、メッセージを伝えようとしても、離脱されたらどうにもなりません。それを防ぐために引きがあります。
引きの歴史
歴史的には、引きは特に連載形式の作品で磨かれてきました。連載の場合、話から話の間が最も離脱しやすいポイントです。そのため、次の話がどうなるのか気になるように仕掛ける方法が研究されてきたのです。
引きが最も意識されてきたのは連載形式の中でも、漫画の分野かと思います。週刊漫画雑誌においては、単に読者をひきつけるテクニックであるだけでなく、次の週も作品を読んでもらう、つまり雑誌を買ってもらう=売上げを上げるために非常に重要な技術だったのです。
引きの宝庫、漫画の引き
紙の漫画の場合は、だいたい下記の3段階の引きを意識して作ることが多いと思います。
1ページごとに引きを意識する→次のページに進ませる役割
見開き2ページで引きを意識するの→ページをめくらせる役割
1話ごとの引きを意識する→次の話も読んでもらう役割
今はデジタルの漫画も多く読まれていますが、基本的な考え方は同じです。また、小説や、アニメ、ドラマ、映画等でも同じように引きが取り入れられています。
引きの具体例
理解を深めるために具体的な引きの例を見てゆきましょう。
引きのない状態のものと、引きがある状態のものを並べて、かっこで読者の反応を入れています。
・引きがない桃太郎(本来の形)
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きなモモが流れてきた
↓
・引きがある桃太郎
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな物体が流れてきた(あれははなんだろう?)
何が流れてきたのかすぐに正解を出さず、あれはいったい何だろうと思わせて、続きを読ませます。
・引きがない鬼滅の刃
妹が鬼になってしまった。
↓
・引きがある鬼滅の刃(本来の形)
妹が急に暴れだした。(なぜだ?何が起こっている?)
こちらもすぐに正解を出さず、まずは様子がおかしいことだけを表現し、あとから鬼になったことを説明します。
同じ内容を表現していても、引きがあるほうが先が気になってしまいますね。これが引きの力なのです。
引きの作り方
ここまでは引きがどのようなものかを説明してきました。
ここからは、ストーリーを作る人のために、引きを作る方法について解説してゆきます。ストーリーを作る人でない場合も知っておくと理解が深まるかもしれません。
1、正解や結果を出さない
先程の例のように、一連の登場人物の動きの結果をすぐに出さないようにすると引きを作ることができます。
一番わかりやすいのが探偵ものです。
登場人物が一堂に会している中で、探偵が「犯人は、この中にいる!」と発言する、定番の場面を思い浮かべてください。たいていはここで話が終わります。読者は正解を知りたくなり、次の話も読んでしまいます。
同じような例をいくつか見てみましょう。
AとBがボクシングで戦っていて、お互いの拳がクロスして両者の頬をとらえた。そこで話を終わらせる。勝敗は?と読者の興味を引く。
AがCに告白する。そこで話を終わらせる。結果は?と読者の興味を引く。
2、途中経過を飛ばして結果を先に出す
先程とは全く真逆の引きの作り方もあります。
今度は、結果を先に出します。
AとBがボクシングで試合を開始。直後に、Bがリングに倒れている。そこで話を終わらせる。一体何が起こったの?と読者の興味を引く。
探偵ものでも、探偵が「犯人はあなただ。」と言ってから殺人トリックの解説が始まります。
このような方法でも引きを作ることができます。
大きな引き、小さな引き
上記の例は、話と話の間の離脱を防ぐような比較的大きな引きです。
もっと細かく、ページからページへ行く間の離脱を防ぐ引き、文から文への離脱を防ぐ引きなどの小さな引きも作ることができます。
例を見てみましょう。
AとBがボクシングで戦っており、AのパンチがBに届きそう。その後どうなったの?と興味を引いて、次のページへ。
逆に、物語全体の離脱を防ぐような最大の引きもあります。このレベルになると、作品のテーマのようなものになります。
進撃の巨人→母親を殺した巨人を滅ぼす/滅ぼせるのか
鬼滅の刃→鬼になった妹を治す/治せるのか
アナと雪の女王→仲の良かった姉妹はどうなってしまうのか/仲良くなれるのか
図で書くと、このようになります。
ストーリーを作る方は、大きな引きから細かな引きまで、多彩な引きを仕込んで、物語からの離脱を防ぎましょう。
結局構成の話である
さて、ここまで解説して、本サイトの読者であればピンときたかもしれません。結局のところ、引きは構成の技術なのです。(構成について詳しくはこちら)
構成とは、シーンの順番のことです。
現実の出来事は、当たり前ですが時系列で起こります。しかし、ストーリーは時系列に並べては単調になってしまいます。そこで、シーンの順番を変えることで、欠けた情報が気になってしまう、という構成が引きなのです。
引きの技術をうまく使って、ストーリーを盛り上げてゆきましょう。