面白いストーリーの作り方【例アリ】偶然に頼らなくてもいける!
面白いストーリーとはどんなストーリーでしょう?
設定が面白かったり、キャラクターが面白かったり、アクションが面白かったり、作品の面白さには色々な要素があり、その要素は千差万別でつかみどころがないように感じます。でも、どんな面白い作品にも共通してあるものがあります。
それは感情が動かされる体験です。作品に触れて感動したり、興奮したり、涙したり、感心したり、考えさせられたり、癒されたりした体験がありませんか?そういった感情が動かされる要素が面白いストーリーには含まれています。つまり「心が動かされるストーリーが面白いストーリー」と言えるのかもしれません。
今回はストーリーの面白さと、その作り方について、作り手の視点から考えていきたいと思います。
この記事の目次
売れている作品のストーリーは面白い?
作品の価値について議論しているとよく「売れている作品=面白い作品」という見方が登場します。まずこの視点の確認から入っていきましょう。
売れている作品にはなにかの人を惹きつける要素があって、沢山の人が見ます。沢山の人が見るということは、売れるということです。
しかし、売れている作品の面白い、面白くないの評価はわかれます。母数が多いので、面白いという人も多いし、逆に面白くないという人も多いのです。どちらの声に注目するかによって、面白いらしい、つまらないらしいと、まだ見ていない人の印象がわかれます。でも、自分の目で見てみないことには評価できませんので「確かめてみよう」ということで、新しい読者や視聴者がそのストーリーを見ることになり、さらに売れることになります。
少し具体的に考えてみましょう。売れている作品(以後国民的作品としましょう)を1000人が見て、売れていない作品(以後、マニアックな作品としましょう)を100人が見たとして、下記のように評価が分かれたとします。
【国民的作品】
面白いと思う人600人:面白くないと思う人400人
【マニアックな作品】
面白いと思う人90:面白くないと思う人10人
面白いと思う人の人数を見ると、600対90で国民的作品の方が圧倒的に多くなりました。この作品は面白いと言えるでしょうか?
では今度は、面白いと思った人の「割合」に注目してみましょう。
【国民的作品】
面白いと思う人60%:面白くないと思う人40%
【マニアックな作品】
面白いと思う人90%:面白くないと思う人10%
これだと、マニアックな商品が面白いように思えます。でもよく考えると、国民的作品は色々な人が見るため賛否はわかれる傾向にあり、逆にマニアックな作品は好きな人だけが見るので、評価は高くなる傾向にあります。
「売れていてかつ面白いと思う人の割合が多い」作品が最高かもしれませんが、そうなるためには前提として多くの人に受けるような大衆的な作品にしなければいけません。好き嫌いは激しいけど芸術的な作品や、社会派で考えさせられる作品は最初から人数が絞られてしまうからです。では、大衆的な作品が優れていて、芸術的な作品が優れていないかと言えばそうではありません。
結局、この問題は永遠に解けないかもしれませんが、ひとまず、目指すべきは「売れていてかつ面白いと思う人の割合が多い」作品なのかもしれません。
売れる作品は作れるのか
ということで「売れていてかつ面白いと思う人の割合が多い」作品のためには大衆的であることが前提です。(もちろん例外はありますが)
では、大衆的な作品を作れば売れるのでしょうか。
答えはNOです。作品が売れるかどうかは、実は誰にもわかりません。それがわかるのであればすべての出版社・制作会社などが大金と長年のノウハウを結集して作った作品はすべてヒットするでしょう。
現実はどうでしょうか。大手出版社、大手映画会社が作った売れない作品は山とあります。
売れる作品とはが純粋に作品の力だけではなく、世の中の動きにマッチしているか、話題性があるか、どんな媒体でどんなタイミングで発表されるのか、広告宣伝にどのくらいお金をかけているのか、などの複数の要素が関わってきます。運も大事な要素です。
作り手がコントロールできない要素は他にもあります。
作り手側の視点から見ると、作品の面白さを左右する「アイデア」を思いつく作業はコントロールがしづらい部分です。アイデアは風呂に入っているときに偶然思いつくかもしれないし、机に向かっている時に思いつくかもしれませんし、通学通勤中かもしれません。これらは作家がコントロールできない要素です。
アイデアの発想法というものもありますが、あくまでツールであって、これをやればアイデアが出る、さらに良いアイデアが出るという類のものではありません。
では面白い作品は偶然でしか作れないのでしょうか。そうではありません。
作品を作る上で、これらコントロールしづらい要素に頭を悩まされる前にすべきことがあります。
それは、作者がコントロールできる要素で高い質を目指すことです。コントロールしづらい様々な要素のため努力するよりは、作者側でコントロールできる部分に力を注いだ方が得策だと思いませんか?
ということで、作者側でコントロールできる面白さの要素と作り方を見ていきましょう。
いくつかのコントロール可能な面白さ
コントロールできる面白さにはいくつかの種類があります。順番に紹介してゆきましょう。
1、キャラクター心理の変化の面白さ
ストーリーの面白さの要素はキャラクター、設定、演出、題材、展開、構成など様々ですが、最も大きな要素の一つにキャラクターの心理の面白さがあります。
人は、人間の心がプラスに変わるわることに共感し感動します。たとえばストーリーの冒頭では「人間なんてみな自分のことしか考えていない」と考えているキャラクターが、ストーリーの終わりでは「他人のことを考えている人もいるんだ。それも悪くない」というようにプラスに変化するようなストーリーです。
主人公が変わって成長していくような話も心理が重要ですし、サブキャラが主人公の影響で変わる話も同じです。主人公と相手の考え方が対立し、相手が折れて考え方が変わるというストーリーも王道中の王道です。
作り方
心理の変化を含んだストーリー作りはそれほど難しいものではありません。最初に考え方の変化を設計し、その上に他の設定等を積み重ねていくのです。
上記の「人間なんてみな自分のことしか考えていない→他人のことを考えている人もいるんだ。それも悪くない」という考え方の変化を中心にすると「ちょっと荒んだ生い立ちの女の子が、スポーツを通して、他の部員に助けられて成長していく」ような話にもできますし、ファンタジーで「一匹狼の冒険者が、他の冒険者と行動を共にすることで、成長する」というような話にすることもできます。
これだけ作品があふれている世の中では、設定や、展開や題材、演出など物語の「肉付け」にあたる部分で過去の作品と被らない斬新さや新しさを出していくためには、人並外れたひらめきや才能(これは上記コントロールできない要素です)が必要です。しかし、人間の考え方や感じ方は不偏なので、ある程度のパターンは限られてきますし、過去の作品と被っても許容されます。上記の「荒んだスポーツ女子」と「一匹狼冒険者」の2つの例は、受け手からは「被っていない」と認識されるでしょう。
このような心理の変化を「骨格」にしたストーリー作りについては、こちらで詳しく説明していますので、参考にしてみてください。
2、展開の面白さ
展開の面白さもストーリーの面白さの大事な部分です。展開の面白さには、読者・視聴者の思い通りに展開する面白さと、裏切られる面白さがあります。例えば、ヒーローが期待通りに敵を倒す姿は爽快です。死んだと思った仲間が実は生きていて、主人公のピンチに駆けつける展開もまた爽快です。
作り方
意外な展開と、思い通りの展開、この違いを生んでいるのは何なのでしょうか?
まずは意外な展開について考えてみましょう。
意外な展開とは、読者・視聴者が「思っていたのと違う展開」をすることです。ということは「こうなるだろう」と予想させておかなければならないということです。
例えば、崖に向かって車が走っていて、この後落ちるだろう、という状態を作っておくことが必要なのです。その上で、落ちる寸前に翼が生えて飛んで行くことで、意外な展開だと認識されるのです。最初から車に羽が生えていたら(そんな車はないので、それ自体は意外ですが)意外な展開にはなりません。つまり、単に奇をてらった展開をすれば意外性が出るのではなく、前振りがあって初めて意外性を出すことができるのです。
思い通りの展開も同じです。こうなるだろうという予想があり、その通りに展開します。予想させておかないと、いまいちな展開になってしまいます。
意外な展開を作る際に気を付けなければならないのは、「事件の解決」そのものに意外性を出してはいけない場合があることです。
「事件の解決」とは、ストーリーに必須の要素の一つです。ここで言う「事件」とは、殺人事件のことだけを指すのではなく、倒すべき敵が現れたとか、廃部の危機とか、恋人がさらわれたとか、現実の解決しないといけない問題のことを指しています。ストーリーには先に触れたキャラクター心理の変化と、事件の解決が必須です。ストーリーの定義をするなら「事件を通してキャラクターの心理が変化するのがストーリー」と言えます。
この事件の解決は、読者・視聴者の思い通りに行かなければなりません。解決できないと、意外性はありますが、後味が悪い作品になります。わざとそのような作品を作りたいのならば良いのですが、普通はここで意外性を出すべきではありません。
意外性を出していいのは、事件の解決ではなく解決の方法です。読者・視聴者が思いもよらない意外な方法で解決をすると、ストーリーはさらに面白くなります。予想通りの方法で解決するのは普通でありがちだと感じてしまうかもしれませんね。
3、知らないことを知る面白さ
知らないことを知ることも面白いと感じられる要素です。興味がある分野の新しい情報を知るのは楽しいものです。例えば自分の好きなアイドルの情報はいくらでも欲しいでしょうし、世界遺産が好きな人であれば、学校の歴史の勉強は嫌いでも、世界遺産情報はいくらでも知りたいと思うでしょう。
読者・視聴者が興味が持てそうな対象であれば、その詳しい情報を伝えることは面白さになります。
作り方
これだけの情報社会ですので、そもそも世の中の人が「知らないこと」を探すのは大変かもしれません。しかし、実は新しい出来事が起こると、新しい題材が生まれるのです。
例えば、先日まで冬季オリンピックが開催されていましたので、カーリングや、パシュートなどは多くの人が情報不足で、知りたい題材です。AIやビットコイン、ユーチューバー等も多くの人が興味がある新しい題材です。
これらの新しい知らないことを見つけるには、世の中の動きに敏感になることが大切です。
また、自分のめずらしい体験をもとに、自分にだけしか得られない情報を世の中に出すことも一つの手段です。そのために色々な経験を積むことも良い方法です。体験には時間やお金がかかる場合が多いですので、不可能な場合は人から話を聞いたり、本などの資料をあたったりといった取材を丁寧にすることで、補うこともできます。
4、設定の面白さ
男の子と女の子の心が入れ替わる、宇宙で進化したゴキブリと戦う、巨人に追われ壁の中に囚われた人類が旧式のテクノロジーで戦う、ジャンプ漫画家を目指す秀才と漫画家の甥の2人の少年・・・面白い設定は、それだけで見てみたくなります。
設定の良さは、展開の幅も広げます。上手くできた設定はそれだけで話の大筋の展開を予測させることができます。例えば、伝説の剣を手にすれば魔王を倒すことができる、という設定は、剣を手にさえすれば事件が解決することを予測させることができますね。
予想させさえすれば、「思い通りの展開」も「意外な展開」も自在に可能になるのです。
作り方
世の中には星の数ほど作品があります。世の中がデジタル化し、過去の作品に気軽に触れることができるようになってきており、新しい作品は、今流通している作品だけでなく過去のあらゆる作品と比較されてしまいます。なので、新しい設定を作り出すのはとても大変です。他らしい情報を常に取り入れるのは必須ですが、既存のものを組み合わせる、要素を抽出してみる、といった方法も有効です。
例えば、「野球」を扱った作品も「殺し屋」を扱った作品は沢山ありますが、両方を組み合わせた作品はありません。「近未来、野球は巨大な利権が絡み、ゲームの裏で殺し屋が暗躍し、いかに相手チームのライバルを殺すかが重要になっている世界。」という設定はありません。
また、男の子と女の子が入れ替わる設定は昔からよくありますが「人格の入れ替わり」の要素を抜き出して、ジェンダーの問題を絡めてみると、「心は男の子の女の子と、心は女の子の男の子が入れ替わる」という設定ができます。この設定は新しいかもしれません。さらに進めて「心は男の子の女の子には付き合っている女の子がいて、心は女の子の男にも付き合っている男の子がいる」としたら、面白いかもしれません。
面白さのレベル
さて、最後に「面白さのレベル」について言及しておこうと思います。自動運転のレベルのように、ストーリーにもレベルの設定があったほうが自分が今いる地点がどこなのか理解がしやすいからです。図を見てみてください。レベル0からレベル4までの5段階を設定しています。
マンガでも映画でも小説でも、商業的に世の中に出る作品は、大抵レベル2以上です。逆に言うと、商業的な作品の最低レベルはレベル2です。これ以下のものは、作品と呼ぶにはまだ早いと言えるかもしれません。
レベル4というのは完全に見るに堪えないものです。矛盾や破綻が多く、作品と呼べません。
レベル3というのは、面白い、面白くないというよりはまず、不足している部分が目についてしまってそればかりが気になってしまうような作品です。キャラクターの目的が途中で変わってしまったり、辻褄合わせの無理やりな展開をしてしまったりといった作品です。意外と商業作品でも、特に映画はこのレベルに近いものはありますが。一昔前は、レベル3、4の作品というものは、趣味やクラブ活動で見るくらいで、あまり世の中には出回らないものでした。しかし、最近ではWEB上に自分で作品をアップできるので、このレベル作品も人目に触れるようになりました。
レベル2はストーリーの要素は完成しており、それぞれの要素が面白い面白くない、好きだ嫌いだと言ったことに関心が向きます。商業的に世に出ているほとんどの作品はレベル2にあると言えます。キャラクターが好き、の展開が神がかっている、そのような話ができるのは、矛盾や破綻に目が向かないレベルだからです。
レベル1は根底に流れる思想が面白い、面白くない、好きだ、嫌いだという議論に足るレベルです。例えば、スターウォーズはスカイウォーカー家の話(1~6時点では)ですが、根底に流れるのは血統主義です。由緒ある血がルークを強くしています。その思想が面白いと思う人もいれば、嫌いな人もいるでしょう。このレベルでは、他の要素は出来上がっているので、思想にまで議論が及びます。
レベル0は同時代性です。時代の空気に合っているかどうかというレベルです。これがクリアされるとヒット作品となります。例えば、シン・ゴジラは10年前に発表されていたら、これほどのヒットはしなかったでしょう。3.11後の日本でなければ生まれなかったし、意味もない作品でした。つまり、同時代性があったからヒットしたと言えるでしょう。
ストーリーレベルについてはこちらで詳しく解説していますので、興味があれば見てみてください。
面白さは作れる
面白さの要素はまだほかにもありますが、代表的で大きなウェイトを占めるこれらの要素をに考えていけば、偶然に頼らず面白いストーリーが作れるようになります。もっと詳しく作り方を知りたい方はこちらもぜひ見てみてください。
全ての要素をまるごと考えるのは難しいですが、1つ1つの要素をわけて考えてゆけば、難易度は随分と下がります。そのようにしてパーツを磨き、全体を組み合わせることによって、面白いストーリーを作ることができるようになるので。ぜひこれらを参考に、チャレンジしてみてください。その他、役に立ちそうな記事を書きにまとめておきましたのでそちらも参考にしてみてください。