構成の意味とは?物語作り/話し方/プレゼンにも【例あり】
ストーリーの構成、プレゼンの構成、構成作家、構成という言葉は芸術の分野でよく聞く言葉のひとつです。なんとなく意味が分かる気がしますが、でも正しい意味は誰も教えてくれませんし、構成の正しい考え方、使い方まで理解している人は中々いないのではないでしょうか。
この記事の目次
辞書的な意味は2つある
まずは辞書的な意味を確認してみましょう。構成という言葉には主に2つの意味、というか使い方があるようです。辞書によって言い回しは違いますが、まとめますと下記のようになります。
1、一般的な意味:いくつかの要素をまとめて組み立てること
2、文芸や音楽など、芸術分野:いくつかの要素を組み立てて作品にすること。
1は「家族構成」「構成要員」のような単語を思い出すと理解できます。確かに要素を組み立てています。これはわかりやすいと思います。
2、は1と同じようですが、分野が芸術に限定されています。これを理解するのが、本稿の主題です。
辞書的な意味から、「要素をまとめる」のだなということは理解できると思います。映画、小説、漫画など、読者側の方は、その理解で十分です。しかし作る側はそれでは不十分です。
作る側が理解すべきことは構成=順番だということ
ストーリーの場合、上記の「要素」とは場面のことです。それをいかに組み立てるかという問題になります。組み立てるというと何か立体的なもののように感じますが、ストーリーは場面が連続して一方向に進むものです。つまり、もっと噛み砕くと、組み立てとは順番のことであり、構成とは場面の順番ということになります。場面の順番を工夫することで、伝えたいことを上手に伝えることができるようになります。
では、場面の並べ方はどのようなものがあるか、それぞれの順番にどのような効果があるかを見てゆきましょう。
時系列
まずは最もスタンダードな順番です。読者がストーリーを読むということは、物語の要素を理解していくということです。作者側から見ればは読者が理解できるように物語を「説明」していくということです。
物事を理解するとき、人は段階的に理解を進めます。学校の勉強を考えてみてください。1年生の時は掛け算を習いませんね。そもそも文字というものがあって、「あ」があって、あと発音して、文章になって・・・と順を追って理解していきます。ひらがなから始まって、漢字も簡単なものから習うはずです。徐々に説明していくということですね。
ストーリーの場合、時間の経過にそって、つまり時系列に場面を並べるのが、最もわかりやすい順番になります。
原因があり、結果がある。背景があり、現状こうなっていて、そのためにこうする、結果はこうなる。というような順番です。例で見てみましょう。まずは時系列でない順番で要素を並べたものを見てください。
例)
先生が奮い立たせた。野球部はもともとやる気のない人たちで、野球部は優勝した。監督が先生。先生は新しく来た人。野球部は弱小だった。
かなり意地悪に順番を滅茶苦茶にしてあります。全部を読めばなんとなくの様子はわかりますが、すんなりとは理解できないのではないでしょうか。読者は、自分の想像で要素の順番を時系列に戻し、補わないといけません。では、正しい順番にしたものを見てみましょう。
例)やる気のない弱小野球部に、新しい先生が監督としてやってきた。先生ははやる気のない野球部員たちを奮い立たせ、野球部を優勝に導いた。
時間の経過に沿って要素を並べると、すっきりと理解できると思います。これで意味が分からないということははないでしょう。
各要素がどのような役割を持っているか、解説もしてみましょう。
1、やる気のない弱小野球部→舞台、現状の説明。
※時代はここには書かれていませんが、単に「野球部」とあるので普通は現代と理解されますね。他の時代が舞台なら、そのように書くからです。
2、新しい先生が監督になった。→物語の始まり。
3、先生ははやる気のない野球部員たちを奮い立たせ、→物語の過程
※この物語の場合、この部分で部員と先生の衝突、和解などがあり、一番面白いところです。
4、野球部を優勝に導いた。→結果
要素をわかりやすい順番で並べることで、物語を説明していく、理解させていくことが容易になります。
非時系列
ここまで見てきたように、要素の並べ方は、物語をわかりやすくすることができます。ということは、わかりにくくもできるということです。構成は読者の理解の仕方をコントロールすることができるのです。
今までの話と反するようですが、時系列を崩すという方法もあります。時系列を崩す、つまり、過去のことを後に持ってきたり、逆に未来を先に持ってきたりすることです。そうすると、インパクトを出したり、引き(続きが気になるように仕向けること)を作ったりすることができます。いくつものパターンがありますが、代表的なものをいくつか挙げていきましょう。
結果を先に出す。
物語の結末を先に出してしまうという方法です。結果を読者に先に理解させ、どうしてそんな結果になったんだろう、と思わせます。それから、その理由は・・・という風に続けるのです。先ほどの野球部の例で見てみましょう。
例)弱小だった野球部が優勝した。・・・やる気のない弱小野球部に、新しい先生が監督としてやってきた。先生ははやる気のない野球部員たちを奮い立たせ、野球部を優勝に導いた。
読者はかストーリーの冒頭から「この話は野球部が優勝する話なんだな」と理解できるので、ある意味安心して、また興味をもって読み進めることができます。いかに結果を興味深くするかがポイントですね。
ちなみにビジネスのプレゼンではこうしなさいとよく言われますね。ビジネスはいかに短時間で効率よく伝えるかが重要ですので、結果を先に、と言われるのです。
結果の直前を出す。
エンターテイメントのストーリーの場合はこれがおすすめです。結果を先に出してしまうということは、諸刃の剣でもあります。結果がわかったら読者は興味をなくす可能性もあるからです。それを避けるために、結果の直前を先に出すという方法があります。例で見てみましょう。
例)9回裏、1-2で負けている野球部、果たして勝てるのか。最後の打席はひ弱な8番・・・やる気のない弱小野球部に、新しい先生が監督としてやってきた。先生ははやる気のない野球部員たちを奮い立たせ、野球部を優勝に導いた。
結果も知りたいし、過程も知りたくなる、難易度も低く一石二鳥の構成です。
伏線を張る
伏線とは、情報を小出しにして後ですべて出す方法です。(詳しくは「張る?回収する?伏線の意味を120%理解する解説」で解説しています。)これも構成の一つです。
例)どんなやる気のない生徒にもやる気を出させる伝説の先生がいた。・・・やる気のない弱小野球部に、新しい先生が監督としてやってきた。先生はやる気のない野球部員たちを奮い立たせ、野球部を優勝に導いた。そう、彼が伝説の先生だったのだ。
構成は全体のストーリーを作るときに有効ですが、場面場面でも有効です。場面の中の構成、全体の構成、この2つの組み合わせで無限の可能性があります。読者にどのように情報を出していくかを考えて構成をしてみましょう。
プレゼンでは、相手によって何を出すかを選択する
さて、構成はストーリーの重要な要素ですが、ビジネスやプレゼンテーションにおいても重要なものです。物語の「読者」のモチベーションは基本的には皆同じで「さあ、これからこの物語はどう私を楽しませてくれるのかな」と思っていますね。
これに対して、ビジネスや他のプレゼンでは違うモチベーションの人も多くいます。これから聞くプレゼンの内容に少しでも足りないところがあれば批判してやろう、適当に聞いておけばいいんだろう、こいつはこれから何を言い出すんだ、そういったネガティブなモチベーションも少なからずあるのです。
そのような人たちに対して、いかに説明していくかということが課題になります。プレゼンの内容がもちろん第一ですが、相手の理解度や、持っている情報によって、どのように構成するかを考えましょう。結果を先に出した方がいい場合もありますし、時系列の方がいい場合もあります。(こちら「起承転結はビジネスも使える!相手や場合によって使い分ける方法」にも関連した内容を載せています。)
物語を作る順番と、構成を考えるタイミング
構成はいつ考えるか、という問題があります。最後に、これについても解説していきましょう。
物語をつくるという作業は、非常に多くの要素を考えたり、組み立てたりする必要があります。多くのことを同時に考えると、慣れないうちは頭が混乱してしまいます。ですので、まずは時系列で組み立てることをおすすめします。キャラクターや、心理状態や、出来事など、他の要素を考えながら構成も一緒に考えてしまうと、非常に思考が複雑になります。まずは時系列で並べることを決めてしまい、その他の内容に集中して作ってしまうのがおすすめです。最後に構成を考えて変更すればいいのです。
うまく構成の力を使って、良い物語を作りましょう。