おちを使って話を100倍面白く!【例あり】
オチ、というとお笑いのオチをイメージしますが、一方で漫画や映画、小説などのストーリーにも使われる言葉ですね。オチっていったい何なのでしょう?オチの仕組みを理解すると、ストーリー作りにも効果的なのはもちろん、人に話をするときにも活用することができます。その構造を理解して目的に応じて役立てましょう!
おちは物語の結末の一種
そもそもオチとは、もともとは『落ち』と書き、落語の結末のことを指していたようですが。今では意味が広がり、映画や小説、漫画などのあらゆる種類の物語における結末を指すようになっています。物語のすべての結末をオチというかというと、そうでもありません。誰もが知っている「桃太郎」は鬼に奪われた金銀財宝を取り戻して帰ってきます。めでたしめでたし。しかしこの結末はあまりオチとは言われません。
では、この話はどうでしょう。
ある心の優しい泥棒は、町一番の大金持ちからお金を盗み、そのお金を貧しい人のために配っていた。でもいくらお金を配っても貧しい人たちの生活は豊かにならない。不審に思った泥棒は配ったお金の行く先を調べてみると、なんと全部ギャンブルに費やされていた。
この結末はオチというイメージに合っていると思います。桃太郎との違いは何でしょう?それは、読者(視聴者、聞いている人を含みます。以下読者で統一。)の予想を裏切っているかどうかです。
桃太郎は鬼という敵が現れ、それを倒すことで物語が終わります。敵が現れた時点で、途中紆余曲折あるにせよ、最後は主人公が勝つということが予想されるのです。そしてその通りに話は進み、終わります。泥棒の話は、貧しい人たちは豊かになるのだろうと予想させておいて、最後に裏切っています。貧しい人は心が清いという固定観念を裏切っているとも言えます。
このように、読者の予想を裏切った結末を特にオチと呼ぶのです。
ちなみに、桃太郎にもオチをつけてみましょう。
~桃太郎は金銀財宝を持ち帰りました。桃太郎は贅沢を覚え、その戦闘力をもって人々から金品を奪うようになりました。そう、桃太郎は鬼になったのです。
桃太郎はこのように終わる、という予想を裏切っていますね。
おちの作り方
ということでまとめますと、オチは予想を裏切る結末、ということになります。読者の立場ならばこの理解で十分ですが、作る側(作者、話し手)に立った時はもっと深い理解が必要です。ここからは作る側の論理を見てみましょう。オチを作るには、読者に予想させる必要があります。こうなるだろう、ということを暗に提示するのです。いくつか例を見てみましょう。
例
1、車が崖に向かって猛スピードで走っている
→このままいけば間違いなく落ちると予想される。
例
1、殺人事件が起こった
→名探偵や腕利き刑事が解決すると予想できる。
1、地雷原を主人公があるいてゆく
→いつ爆発してもおかしくないと予想できる。
NGな例も見てみましょう。
例
1、主人公がハンバーガーを食べている。
→この後の展開が無限にありすぎて、予測がつかない。
例
1、宇宙人がかき氷のようなものを作っている。
→常識の範囲外のことは予想がつかない。
何かが進行しており、順当に進めばこうなるということまで予想させるように表現するのです。そして、その予想される結末とは違う結末を設定すれば、オチを作ることができます。上記の例にオチをつけてみましょう。
例
1、車が崖に向かって猛スピードで走っている
2、直前でガス欠になり止まった
2、羽が生えて飛んで行った
2、崖から落ちたが誰も乗っていなかった。
例
1、殺人事件が起こった
2、たまたま通りがかった小学生が解決した
2、実は被害者は死んでいなかった
2、狂言だった
例
1、地雷原を主人公があるいてゆく
2、地雷を踏んだが、不発弾だった
2、地雷がどこに埋まっているか書いた地図を持っていたので踏まずに済んだ
2、そもそも地雷は昨日撤去されていた
などです。読者に予測指せる状況を作り出せば、あとはいくらでもオチを作ることができます。
おちの効果
オチがつくと、話がまとまった感じを出すことができます。
1、車がガス欠寸前でガソリンスタンドに向かっている。
→ガス欠で止まってしまうか、間に合うかだと予想される
2ドライバーはガソリンスタンドを目前にハンバーガーショップにに寄ってハンバーガーを注文する。
「ん~おいしい!」しかし、その結果ガス欠に。
最終のガス欠は予想通りということになりますが、そこまでの過程が予想外の展開になります。オチがあるとまとまった感じがしますね。CMなどは短い時間で満足感を出すためにこの方法論で作られています。
夢オチ
オチの種類は無数にありますが、その中でも「夢だった」で終わるものを夢オチと言います。夢でなくても、幻だったとか、~ということを想像した、~という話だったのさ、などの亜種もたくさんあります。これらの特徴はそれまでの話の前提をすべてなかったものにすることです。作り手の間では、この夢オチは、基本的には禁じ手とされています。夢オチを使うと、何でもありになってしまうからです。でも本当は工夫次第で効果的に活用することができます。
例
1、車が崖に向かって走っている、このままいけば間違いなく落ちる。
2、落ちた。でも夢だった。
例
1、長編小説の最終巻30巻目で、長い権力争いや苦悩の末、とうとう主人公が社長に昇りつめた。
2、全部夢だった。入社日の朝だった。
今までのは何だったんだ!ということになってしまいますね。なので、良いオチではないと言われる理由もわかりますね。
夢オチはあまりに万能、どんな状況もひっくり返すことができるので、展開に詰まった作者が安易に使ってきた歴史があるため、このようなことになったのでしょう。
ただ、夢オチも使いようはあります。
1、車が崖に向かって走っている、このままいけば間違いなく落ちる。(落ちた!)
2、落ちた。でも夢だった。がベットからは落ちた。
オチを重ねることで、少し何だったんだというがっかり感は薄れます。
また、ホラーなどでは逆に活用する手法もあります。
例
1、ゾンビに囲まれた絶望的な状況、今まさにゾンビに肩口を噛まれそうになっている。噛まれたら自分もゾンビになってしまう。
2、主人公が静かなベッドで目を覚ます。すべて夢だった。しかし主人公の肩には噛み跡が。
夢ではなくて現実だった証拠を主人公が見つけて戦慄。もしくは主人公が気付かず、読者だけが見つけて戦慄、などの展開が考えられます。
夢オチは今までの状況をなかったことにしてしまいますので、絶望的な状況から読者を引き戻せばホッと安心させることもできます。それを逆手に取って、安心させてからもう一度絶望的な状況に引き戻す、という手法です。このように、夢オチは一概に悪ではなく、状況によって使い方を工夫すれば使いこなすことができます。
おちを活用して話を面白く
このように、おちの構造がわかると、効果的に話したり、ストーリーを作ることができます。ぜひ使いこなしてワンランクアップしてくださいね。