起承転結の意味を例文10個でわかりやすく解説
誰もが一度は聞いたことがある「起承転結」という言葉ですが、その正しい意味を知っていますか?物語やプレゼンなどの構成の基本と言われるこの起承転結について、起承転結に解説が100万回読まれた現役シナリオライターの筆者がくわしく、わかりやすく解説します。
この記事の目次
起承転結とは?
起承転結は物語やプレゼンを作る際に参考になる考え方です。ここで物語というのは小説や漫画、脚本などの創作を指しています。プレゼンはビジネスや学校などの「発表」のことを指しています。この2つ、一見全く異なるように見えますが物語もプレゼンも「相手に何かを伝える」という意味で同じものです。つまり、起承転結は相手に何かを伝えるための基本的な技術なのです。
物語やプレゼンで最も重要なのはもちろん「内容」ですが、いくら内容が良くても上手に伝えることができなければ、その良さを理解してもらうことはできません。そこで、どのような順番で何を表現してゆくべきかを説明してくれているのが起承転結なのです。何かを伝えるための基礎技術、という風に言い換えることもできますね。
起承転結のルーツ
四文字熟語のようなこの言葉、そもそもは中国にルーツがあります。日本に俳句や短歌があるように、中国にも「漢詩」と呼ばれるいろいろな詩があります。漢詩にはいくつかの種類があるのですが、その中に、4つの塊からなる「絶句」という形式があります。学校でも習うのですが、覚えている人は少ないかもしれません。ですので、ここに有名な絶句を挙げてみましょう。
江碧鳥逾白
山青花欲燃
今春看又過
何日是帰年
漢文の巨匠「杜甫」による望郷の詩で、簡単にまとめると『河の水は青く鳥は白く、山は緑、花は燃え、今年の春も過ぎ去ろうとしている、いつになったら故郷に帰れるのだろう』という内容です。注目していただきたいのが、この詩が4つのまとまりでできていることです。実は、このそれぞれの区切りの名前を、起句、承句、転句、結句といいます。そして、それぞれの句にはこのような役目がある、こんな風にするといいとよ、というアドバイスが中国の古い文献に載っています。
起句 比喩や連想から始める。
承句 あまり変化を付けてはいけない。
転句 読み手を驚かせる変化を。
結句 余韻を作る。
このように、決まり事というよりはアドバイスに近いものが昔の中国には定着していたようです。これが日本に輸入されてきて、長い歴史の間に現在の起承転結になったと考えられています。
起承転結の意味
さて、ここから日本での起承転結について解説してゆきます。一般的に起承転結は下記のように説明されます。
起 物語の始まり。
承 始まりの続き。
転 逆転や大きな変化が起こる。
結 結果。
起では物語が始まり、承ではそれが展開する。そして転で変化が起き、結で結果が示される、という具合です。絶句や、同じく4つのコマで構成される4コマ漫画には、起承転結をそのまま適用することができます。しかし、小説や漫画、脚本、プレゼンなどは4つに分かれていないので、4等分のままでは適用することはできません。長い構成に当てはめるときのポイントは、それぞれの分量を均等にしないことです。起をあまり長くするのはおすすめしませんが、承は長くてもよく、転は見せ場なのでたっぷりと、結はあっさりでもいいですし、余韻をたっぷり使ってもいいでしょう。このように、各部分の長さを調整して、起承転結を当てはめてゆきましょう。
起承転結はビジネスに使えるの?
ここまで見て来たように、起承転結は相手に伝える技術なのでビジネスのプレゼンにも使えます。しかし、ひと工夫が必要です。ビジネスは時間の勝負ですので、一般的に結論が先、と言われます。起承転結では結論が最後ですので、この意味では起承転結はビジネスに向いていないと言えるでしょう。しかし、結論を先に提示したとしても、その後には「なぜその結論なのか」の説明をしなくてはなりません。その際は起承転結に沿って組み立てて説明することでうまく説明することができます。つまり、ビジネスでの起承転結は
結+起承転結
の形が最も良い、といえるでしょう。
起承転結のアップデート
ここまでが起承転結についての一般的な説明なので、ただ理解したいだけであればこれで十分です。漫画や小説、脚本などの創作の分野でさらに実用的に使いたいという方はこの先をお読みください。例文を見てみたい、という方は最後に例文をまとめていますので、ご覧ください。
物語とはなにか
さて、まずは物語とはなにかということを説明したいと思います。物語とは「事件や出来事を挟んで、前後が変化する話」と定義することができます。
勇者が魔王を倒して世界が平和になる、探偵が犯人を捕まえ、事件が解決する、仲の悪かった二人が一緒に出掛けて仲良くなる、という具合に「最初の状態が、最後には変化している」話が物語なのです。
つまり、物語は1,最初の状態、2,事件、3,最後の状態という3つのシーンで表現することができます。
◆勇者が魔王を倒して世界が平和になる
1,勇者が立ち上がる
2,勇者が魔王を倒す
3,世界が平和になる
◆探偵が犯人を捕まえ、事件が解決する
1,事件が起きる
2,探偵が事件を解決する
3,犯人が捕まる
◆仲の悪かった二人が、一緒に出掛けて仲良くなる
1,仲が悪い二人
2,一緒に出かける
3,仲が良くなる
差分の1
一方、起承転結のまとまりは4つです。この差分1は何なのでしょうか?
実は説明のためにわざと抜いているのですが、上記の例には足りない要素があります。それは、物語の舞台がどこなのか、登場人物がどんな状況にあるのか、という物語の前提条件です。話が始まるときに、前提条件がないと相手は混乱してしまいます。誰かが「飛行機が墜落したんだって!」と話し始めたとします。多くの人は「日本」の「現在」のことだと思ってニュースを確認するでしょう。しかし、話し手は50年前の墜落事故のことを言っているかもしれないし、外国の出来事を言っているかもしれません。このように物語には前提条件が必要なのです。
ということで、上記例に「0,」として前提条件を足してみましょう。
◆勇者が魔王を倒して世界が平和になる
0,世界は魔王に支配された
1,勇者が立ち上がる
2,勇者が魔王を倒す
3,世界が平和になる
◆探偵が犯人を捕まえ、事件が解決する
0,舞台は現代、探偵がいる
1,事件が起きる
2,探偵が事件を解決する
3,犯人が捕まる
◆仲の悪かった二人が、一緒に出掛けて仲良くなる
0,舞台は学校、二人の生徒がいる
1,仲が悪い二人
2,一緒に出かける
3,仲が良くなる
前提条件がはいることで、この話はファンタジーなのだな、現代なのだな、探偵ものか、スポーツものか、という風に相手は話を聞く準備ができるのです。
さて、これで要素が4つになりました。「前提条件+3つの要素」が物語の基本構成であり、これを起承転結に当てはめると、「起」が前提条件、「承」が最初の状態、「転」で変化が起こり、「結」が最後の状態、ということになります。
アップデート版 起承転結
ということで現代用にアップデートされた実用的な起承転結はこのようになります。
起 物語の前提条件。
承 最初の状態。
転 逆転や大きな変化が起こる。
結 最後の状態。
起、では物語の前提、舞台がどこなのか、登場人物は誰なのか、何をする話なのかを提示し、何事かが起きている状態を示します。承では、登場人物がどう対処するかを示します。転では問題や事件を解決したり、思わぬ方向に向かったりします。そして、結ではどのような変化が起きたのかを示します。長い話の場合は各要素のボリュームを調整しながら、起承転結を適用してみてください。
起承転結の例文10個
さて、最後に例文を見ながら理解を定着させてゆきましょう。
1、桃太郎
起 昔々、桃から桃太郎が生まれた
承 桃太郎、鬼ヶ島に出発
転 鬼を退治する
結 金銀財宝をもって村へ帰還する
2、アナと雪の女王
起 魔法を使えるエルサ、人々には秘密にしている。
承 秘密がばれ、エルサの魔法が暴走、国中が氷で覆われる。
転 姉と妹の真実の愛で、魔法が解ける。
結 皆がエルサを受け入れる
3、異世界転生
起 主人公は異世界に転生したが、転生先の世界は魔王が支配していた
承 主人公にはスキルが与えられていたので、スキルを磨く
転 スキルにより魔王を倒すことができた
結 平和が訪れた
4、異世界スローライフ
起 主人公は異世界に転生しサバイバルしなければならない
承 現代の知識を駆使して工夫する
転 うまく拠点を作ることができた
結 スローライフが始まる
5、悪役令嬢に転生
起 主人公は物語の悪役令嬢に転生したが、物語は悪い方向に進んでいくことがわかっている
承 主人公は物語の結末を知っているので、変える方向に動く
転 大きな分岐点をうまく変更することができた
結 物語は良い方向に進む
6、いじめっ子・いじめられっ子
起 主人公はいつもいじめられている
承 日々いじめっ子の要求が強くなる
転 勇気を出していじめっ子と戦う
結 勝って解放される
7、バレエダンサー
起 主人公はバレエの才能があるが、舞台に上がると緊張する
承 大きなコンクールが開催される
転 緊張を克服し、コンクールに勝つ
結 世界的なバレエダンサーに
8、刑事もの
起 事件が起こる
承 名探偵が捜査に乗り出す
転 名推理で犯人を見つける
結 事件解決
9、ラブコメ
起 主人公には好きな人がいるが、なかなか声がかけられない
承 文化祭があり、男女がペアになることに
転 勇気を出して声をかけたら、両想いだったことが判明、ペアになれた
結 めでたくカップルに
10、ゾンビ島からの脱出
起 ゾンビがいる島に取り残された主人公
承 不死身のゾンビに襲われ絶体絶命に
転 ゾンビの弱点を発見し、形勢逆転
結 しかし島ごと封鎖されることになり、取り残されてしまう
起承転結を活用しよう
もともと起承転結は中国の詩文である「漢詩」のひとつ「絶句」の4つの要素のことを示したものでした。それが、日本に輸入され、長い時間をかけて形を変え、物語の基本法則として定着しました。今回は、伝統的な起承転結を現代的にアップデートし、新しい起承転結について説明しました。効果的に起承転結を使って、創作やビジネスに役立てていきましょう。