メタ・メタレベルの意味が89%くらいわかる解説【使い方の例文つき】
メタとか、メタ認知、メタ発言、メタフィクション、メタレベルなど、メタとつく言葉がありますよね。
映画やアニメ、漫画や小説の解説、時にはビジネスの世界などで聞くことがあると思います。
メタとは辞書的には「高次の~」とか「超~」と説明されます・・・・・・と言われてもよくわからないですよね!
この言葉、というか概念は、はっきり言いまして難しいです。
どのくらいかというと「忖度」とか、「アイデンティティ」くらい難しいです笑
なのでこの言葉がわからないことは別に恥ずかしいことではありません。
実は使っている人も良くわかっていないんじゃないかなという場合もあるくらいです。
そして、今日からはわかるようになりますので安心してください。
この記事の目次
メタがわかりにくい理由1
この言葉の意味をわかりにくくしている原因がいくつかあります。まず1つは、抽象度が高いからです。
では、抽象度が高いとはどういうことなのか。まずはそこから出発しましょう。
これを見てください。小学生の算数の問題です。
リンゴが4個あります。2人で分けるといくつになるでしょう?
これを抽象度を上げてみましょう。
4÷2=
上記2つは同じ概念を違う次元で見ているのです。抽象の反対は具体です。小さな子供は「赤い色」はわかりますが「色」という概念はまだわかりません。「きゅうり」はわかるけど「野菜」はわかりません。具体からより概念に近くなってゆくのが抽象です。
抽象度が高くなると、理解が難しくなることが分かったと思います。
ということで、メタは抽象度が高いので理解が難しいのです。
メタがわかりにくい理由2
もう一つの理由は、「メタ」が本来は接頭辞だからです。接頭辞とは、「反」「異」「真」とか「新」のように、語句の頭について意味を加える言葉です。「反」を使った言葉には「反体制」「反重力」「反物質」などがありますね。まとまった単語になってしまえばわかるのですが、「反」を単独で考えると「逆の」とか、「反対の」という意味になり、より抽象的になり、理解力が必要になってきます。メタはメタだけで使う言葉ではいのですが、「メタ~」が省略されて全部まとめて「メタ」で使われるのでわかりにくいのです。
メタがわかりにくい理由3
一番多いメタの使い方、おそらく「メタファー」の略語として使われている場合です。物語に関係する内容のときによく出てきます。
メタファーとは「例え」のことです。例えば、優しい人(人間)を指して「あの人は天使だ」と言ったとき、「天使は優しい人のメタファー」だと言います。その人が天使なわけではありません。※メタファーについて詳しく知りたいときはこちら「メタファーとは何か驚くほどわかる」を見てください。この記事の後半もメタファーについての話になっていますので参考にしてみてください。
ちなみに、調べてはいませんがメタファー(metaphor)という言葉自体がメタ(meta)+ファー(phor)という成り立ちのような気がするので(ファーは何だかよくわかりませんが)、メタファーを略してメタと言っても特に問題ないように思います。大抵の場合、メタファーと言い換えても大丈夫なことが多い印象です。
メタがわかりにくい理由4
メタという言葉が定着してくると、皆やたらとメタという接頭辞をくっつけるようになり、中には本来の意味と少し変わってきてしまっているものが含まれています。このように造語が沢山あるのもわかりにくくしている原因の一つです。
で、メタって何?
ということで、メタは接頭辞ですので、メタが含まれた単語を理解してゆくと理解することができます。造語っぽいものもなるべく多く、なるべく具体的に解説していきましょう。
メタ発言
例えば漫画の中で戦いのシーンが描かれています。あと1ページで単行本が終わるのに決着はつきそうにありません。すると突然、1人のキャラクターが読者の側を向いて「ページ数がもう足りないよ!」と発言します。昭和の漫画でよくある、このような発言をメタ発言と言います。物語の中にいるはずのキャラクターが、自分の存在する階層を超えて、制作者や読者と同じ階層に立ち発言しているのです。
【使い方の例】
このキャラクターのセリフはメタ発言だ。
メタ的、メタっぽい
このような場合のメタはメタファーの略語であることが多いようです。メタファー=例えでしたね。「例え」を駆使してストーリーや表現を作っていることをメタ的と言います。例えば「恋に破れた辛い心境を歌った」歌のミュージックビデオで、「リンゴが握りつぶされる映像」があったとします。辛さを暗にたとえて表現しているのだなと理解できます。これをメタっぽいな、と言います。
【使い方の例】
このシーンで雨が降り出すなんてすごくメタっぽいよね。
最近は、リンゴの例のように、あからさまだったり、使い古されたりしたメタファーを好ましくないと捉える傾向があるので、揶揄してメタっぽいということも多いようです。音楽分野ですが岡崎体育「ミュージックビデオ」はまさに上記のようなメタ表現(メタファー)を超メタ的あるいはメタメタ的(メタのさらに上の階層)な視点からとらえて笑いに変える高度な作業をしています。
メタフィクション
物語(フィクション)の中に物語があるような構造のことを指します。登場人物が上記のようなメタ発言をしたり、メタ行動をとる(キャラクターが作者や読者と会話したり、作者が「しまった、ページ配分間違えた!」などと作中に登場して発言したり)することで、物語と現実の境界を破壊し、区別を無くします。このような時、その作品はメタフィクションの構造を採っていると言います。
【使い方の例】
この作品は主人公が突然読者に問いかけるメタフィクションの構造を採っている。
メタレベル
メタレベルはそのまま、一段高いレベルという意味です。
【使い方の例】
この作品は、メタレベルでは人間の罪について描いているんだよ。
メタ思考
一段高いメタレベルで考えることを言います。
ということで、メタ=「一段高いレベルの~」ということが徐々に理解できてきたのではないでしょうか?
メタファーの略語のメタの意味
続いて、最も使用頻度が高いメタファーの略語としてのメタについて詳しく見ていきましょう。メタ(メタファー)はストーリーの重要な要素でもありますので、この意味が理解できるようになれば、話の中で出てきたときに納得できるだけでなく、映画などの作品を見たときも人の数倍楽しむことができます。また、作品を作る立場の人は、何倍も厚みのある話を作ることができるようになります。
メタファーの略語としてのメタは一言で言い換えることができます。この一言で、すっきり理解することができます。
メタとは「隠されたほんとうの意味」です。
そのように脳内変換しながら、童話「赤ずきんちゃん」を例に、具体的にみてましょう。
あまりいないと思いますが、ストーリーを知らない人のために簡単におさらいしておきます。
【あかずきんちゃん】
赤ずきんちゃんは森に住むおばあさんのために、お使いに出かけます。
赤ずきんちゃんを狙う狼は先回りし、おばあさんを食べてしまい、
おばあさんに化けて赤ずきんちゃんを待ち伏せます。
赤ずきんちゃんは正体を見破りますが、食べられてしまいます。
ちょうどその時、通りかかった狩人が寝ているオオカミの腹を割き、赤ずきんちゃんを助けます。
オオカミは、代わりに石を腹に詰められ、重みで井戸に落ちて死んでしまいます。
赤ずきんちゃんはこのようなお話でした。歴史のある童話なので、書く人によっていろいろとバージョンがありますが、大体はこのような筋です。
さて、このお話の「隠されたほんとうの意味」を考えてみましょう。1つではありません。
・小さな女の子が一人でうろうろすると危険な目にあう(赤ずきん目線)
・悪いことをすると、ひどい目にあうよ(オオカミ目線)
・小さな女の子を一人でお使いに出してはいけない(お母さん目線)
ストーリーについて考えてみると、このような意味が隠されていることが分かります。
赤ずきんちゃんのストーリーをそのまま受け取ると「赤ずきんの冒険」とでもいうような楽しい話に見えます。しかし、隠されたほんとうの意味を感えると「若い女の子が一人でうろうろしてはいけない」「悪いことをしてはいけない」「小さな女の子を一人でお使いに出してはいけない」というストーリーになります。
このように、メタ(一段高い)レベルから考えてとらえた内容=「隠されたほんとうの意味」をメタといいます。
メタの適用範囲
上記の赤ずきんちゃんの話をメタ的とらえると「教訓」と同じようなものに見えますね。しかし、メタの方が広い概念で教訓はその中に含まれます。
赤ずきんちゃんのストーリー全体をメタレベルでとらえると「教訓」になるのですが、メタはストーリー全体だけでなく、個別の表現方法や、ストーリーのパーツ、キャラクター、事柄、言葉などあらゆるレベルで適用することができます。再び赤ずきんちゃんで考えてみましょう。
パーツのメタ
赤いずきん=赤は純潔の象徴=赤ずきんちゃんは処女のメタ
キャラクター
オオカミ=悪い男、犯罪者のメタ
出来事
食べられる=犯されることのメタ
このように見てゆくと、かわいい童話がちょっと危険な話に見えてきましたね!
赤ずきんちゃんはハッピーエンドの話ですが、上記のようにメタレベルでとらえたとき、全体の話は単純なハッピーエンドではなくなります。つまり、↓このようになります。
若い女の子は命は救われたが、犯されてしまった。しかし復習をとげた。
あかずきんはメタレベルでは結構ブラックな話なのです。映画なら15禁です。
理解を深めるために、他にもいろいろなメタ表現を見てみましょう。
メタの例
わかりやすい例を挙げてみまます。子ども向けの作品やアニメはメタの宝庫です。
キャラクター自体がメタ:千と千尋の神隠し
このサムネ怖いな! 千と千尋の神隠しに登場する有名なキャラクター「カオナシ」は直接人の顔を見て話すことができず、ぼそぼそと話す人=引きこもりのメタと捉えることができます。千と千尋の神隠しはメタが多く、湯屋への橋を渡る=あの世の世界に行くとか、カオナシが他人を取り込むとしゃべる=自分の言葉は発せないが、他人の声を借りると多弁になる=ネットの世界では多弁とか、いろいろな捉え方をすることができます。
ちなみに、「千と千尋の神隠し」をまだ見ていない人は↓こちらから無料で見れます。メタの宝庫なのでクリエイターは必見です。2018年6月24日現在※申し込んだ後、無料期間は30日間なので注意してください。
世界観自体がメタ:ズートピア
共存していた草食動物と肉食動物があるときから対立してしまう。
種の対立、つまり、人種の対立のメタだと捉えると、ズートピアはアメリカ社会と捉えることができます。話もメタレベルの構造も完璧なので、子どもでも楽しめるし、大人の深い鑑賞にも耐えられる非常にすぐれた作品です。かく言う私も、前情報なく可愛い動物たちの話かと思って見たところ、完全にやられました笑
ズートピアはメタが非常にわかりやすいので、入門として最適です。こちらも上と同じく↓無料で見れます。2018年6月24日現在※申し込んでから無料期間は30日間なので注意してください。
メタの役割と、メタの受け取り方に正解はあるのか
メタを理解すると、同じストーリーを何倍にも楽しむことができますし、作る立場の人はメタを駆使できるようになると、厚みのある話を作りことができるようになります。ただ、メタ込みの話作りは難易度が高いので、普通にストーリーができるようになってから挑戦すると良いでしょう。
もう一度振り返りますが、なぜメタという言葉・概念が難しいかというと、抽象度が高いからです。具体的なものは理解しやすく、抽象的なものは難しいのです。赤ちゃんには最初、自分が使っているコップが何なのか理解できません。なので、取っ手をなめたりしますね。それが徐々に飲み物を飲むものであるとわかり、さらに食器の一種であること事が理解されてゆくのです。高次の概念を理解すると、世界の捉え方が変わるのです。
ところで、メタレベルの意味の捉え方に正解はあるのでしょうか? 赤ずきんちゃんの話は、必ず、上記のような暗い話なのでしょうか。答えはNO。「正解はない」のです。なぜなら、読者が作品や事象をどのように受け取ろうと、それは受け手にゆだねられるからです。赤ずきんをちゃんを教訓の話と受け取る人もいれば、楽しい童話ととらえる人もいます。お母さん目線の人もいれば、オオカミ目線の人もいます。どの次元でとらえるかも自由です。
もちろん、作者がメタレベルまで意図して作っている場合もあります。しかし、それでも受け取り方には個人差があり、それが作品というものの豊かさでもあるのです。また、多くの人が理解できるメタの場合は正解らしきものが世の中的に形成される場合がありますが、作者の意図と同じかどうかはわかりませんし、同じだからと言って正しいとは限らないのです。
ストーリー作りのためのより高度なメタの使い方
ということで、ここまででメタについては充分理解できたかと思います。ここからは、話の作り手の立場から、もう少し高度な話をしてみましょう。
先に出てきた赤ずきんちゃんの話は、実はストーリーとして考えると突っ込みどころが満載です。
1、なぜオオカミは真っ先に赤ずきんちゃんを食べなかったのか。
2、待ち伏せするにしても、なぜおばあちゃんに化ける必要があったのか。
3、赤ずきんちゃんは無傷でオオカミの腹から出てきたが、オオカミは咀嚼しないの?
4、狩人がちょうど通りかかるのはご都合主義すぎる。
しかし、このお話がメタの話だと捉えることができると、答えがわかってきます。
1、オオカミが野生の動物なら真っ先に食べるだろうが、オオカミは犯罪者のメタだと捉えると「犯行を完璧にしようとした」と考えられる。
2、こちらも1、と同じ。完全な犯罪と、犯行を楽しむ要素もあった。
3、メタレベルだと、犯されるだけで死ぬわけではないから、ストーリー上、生きて出てくる必然性があった。
4、狩人は赤ずきんを腹から出すストーリー上の装置として出てくるだけなので、偶然でも何でもよかった。
ということになります。ストーリーの整合性を考えたときに、表面上の整合性と、メタ上の整合性があり、本当は両方を持たせる必要があるのですが、最悪どちらかが整っていれば破綻しません。上記は、メタ上の整合性が取れているので破綻しないのです。
当然、両方がきれいに整っているものが名作と呼ばれます。そうでないものはどこかちぐはぐになっている印象を受けるものです。表面上の整合性を保つだけでも難易度が高いので、まずは表面上の整合性を持たせられるようにしましょう。それができるようになったら、メタレベルの整合性を考えてみましょう。
まとめ
ということで、メタ、わかりましたでしょうか。抽象的な言葉を理解するのはなかなか難しいですので、89%くらいわかっていれば充分かと思います。そして、ぜひ自分で使ってみてください。使うためには考えなければならず、考えて使うことによってと、理解が深まってゆくのです。ストーリーを作る人でなんとなく頭打ち感がある人はぜひマスターしてください。スタンダードなストーリー作りに自体がまだ完璧ではない方はこちらをどうぞ。メタを活用してワンランクアップを目指しましょう。