ホラー漫画・映画にストーリーは必要か?スリラー・サスペンスとの違い
「気付いたらまわりはゾンビだらけ! 絶体絶命!」「何か恐ろしい怪物が町に出没するらしい・・・」「いわくつきの洋館に泊まることになった・・・」この設定だけを聞いて、具体的な作品を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。実際、このような設定の話は世の中に山ほどあります。
今回はこのようなホラーやスリラー、そしてサスペンスのストーリーについて解説したいと思います。
この記事の目次
ところでホラーとスリラー、サスペンスの違いって?
ホラーとスリラー、サスペンス、なんとなく似ているこの3つのジャンル、明確に違いが判りますでしょうか? これらの違いについて公式の定義は存在しないようですが、下記のように考えるとすっきりと理解することができます。この後の話にも関わってきますので違いを理解しておきましょう。
ホラーとスリラーはどちらも読者や視聴者を「怖がらせる」「驚かせる」ことに重きを置いた作品です。違うのは恐怖の対象です。ホラーは幽霊やゾンビなど、「死んだけど存在している人」(もしくはそれに類するもの)が登場して怖がらせます。スリラーは「殺人鬼や異常者など、恐ろしい生きている人」が登場して怖がらせてきます。例外はありますが、大体このような構図になっています。これに対し、サスペンスは探偵モノや、刑事モノなどを代表とした「謎を解くこと」が中心になっている物語。殺人事件の犯人を捜したり、推理したりします。
ホラーもスリラーも話は同じ?
ホラー・スリラーと書くのが面倒なので以降ホリラーと書きますね。ホリラーの話はどれも同じように見えます。(サスペンスの話はまた後で)
主人公が異変に気付き、異変に恐怖し、生き延びようとする・脱出しようとするという大筋があり、結末は①解決できず絶望で終わる、②解決してハッピーエンド、③解決したように見せかけて恐怖はまだ続く、の3通りしかないように思えます。しかし、世の中には沢山のホラーやスリラーがあります。なぜでしょうか?
ストーリーは骨格と肉付けでできている
まずは「ストーリー」というものがどのようにできているか、考えてみましょう。ストーリーはキャラクターたちの心情や状況の変化といったストーリーの根幹となる要素、舞台や設定・ネタ・外見などの外側の要素の2つで構成されています。「骨格」と「肉付け」と言えばイメージしやすいかもしれません。
たとえば、鶴の恩返しと、笠地蔵は骨格は同じです。
鶴恩返し:良い心を持ったおじいさんが罠にかかって動けなくなっている鶴を助け、見返りにはたを織るという話
笠地蔵:良い心を持ったおじいさんが寒そうなお地蔵様に笠を与え、見返りに米などをもらうという話
この2つの違いは、肉付けにあります。
鶴の恩返し:鶴とその鶴が化けた美しい女の人の登場、正体がばれると去るネタ「鶴の正体を知ってしまい、鶴が去って行く」
笠地蔵:お地蔵さま、神からの恩恵ネタ「善い行いをしたものにお地蔵様=神からの恩恵が与えられる」
同じ骨格でも肉付けが違うと、全く違うストーリーに見えるということがわかると思います。
ホリラーも同様で、骨格は同じでも肉付けが違うのです。
サスペンスも同じで、犯人が罪を犯し、反省するという筋は大体同じです。しかしトリックや事件背景が違ったり、主人公の刑事や警察の能力やキャラクターが違ったりするのです。
ホリラーとサスペンスが肉付けが重要な理由
このように、ホリラーやサスペンスは(ここからは合わせてホリスペンスとでも呼びましょう。)肉付けに重きが置かれます。その反面、骨格はシンプルです。
シンプルな骨格は悪いことではありません。そうすることで、読者や視聴者は肉付けに集中することができるのです。
肉付けを凝った上に、骨格も凝ってしまうと、面白さの中心がブレてしまいます。複雑な人間関係や哲学的な心理描写の中にゾンビが登場しても、読者はどちらに集中していいかわからなくなってしまい、どっちつかずになってしまいまうのです。
親戚との複雑な相続争い、兄と弟が血みどろの決闘をする傍ら、未亡人の妹と恋人の運命は・・・・・・などと展開しているときに、死んだお爺ちゃんがゾンビとして復活し、村人もゾンビ化し・・・とやっても、どちらを楽しんでよいのかわからなくなります。(これはこれで面白そうですが)結局はパニックになり逃げまわるシーンを書くことになることになるので、人間ドラマの部分は乖離してしまうことが簡単に想像がつきますね。
ホリスペンスを書きたいのでしたら、肉付け部分を今までにないものを用意するか、最低でも今までにない組み合わせを作ることが最優先です。そのうえで、シンプルな(しかししっかりとした)骨格を採用するのが良いでしょう。
「骨格と肉付け」についてはこちらでも詳しく解説していますので良ければ参考にしてみてください。
ハラハラドキドキはエンタメの心臓!
ということで、ホリスペンスからストーリーの骨格と肉付けについて解説しました。読者や視聴者をハラハラドキドキさせるのはエンターテイメント作品の真骨頂です。ホリスペンスの分野は沢山の良作が世に出ていますが、肉付けを変えればまだまだ可能性のあるジャンルだと思います。競合も少ないように感じますので好きな方はぜひチャレンジしてみてください。